火災保険の値上げ対策5選|補償見直しと水災細分化活用
この記事のポイント
火災保険の値上げに負けない5つの対策を専門家が解説。補償内容の見直し、水災5段階料率の活用、免責金額の設定、長期契約、複数社比較で保険料を適正に抑える方法がわかります。
火災保険の更新や新規加入の際に「保険料がこんなに高くなったの」と感じる方が増えています。実際、火災保険料は近年の自然災害増加を背景に断続的な値上げが続いており、今後もこの傾向は続く見通しです。
結論として、火災保険の値上げには補償内容の見直し、水災5段階料率の活用、免責金額の設定、長期契約、複数社比較の5つの対策が有効で、適正な補償を維持しながら保険料を抑えることができます。この記事では、値上げが続く背景を整理した上で、具体的な5つの対策とやってはいけない対策を専門家への取材をもとに解説します。

なぜ火災保険は値上がりし続けるのか
火災保険の値上げ対策を考える前に、まず値上がりの背景を理解しておきましょう。原因を知ることで、対策の方向性がより明確になります。
自然災害の増加と保険金支払いの拡大
火災保険料が上がり続ける最大の理由は、自然災害の増加です。台風、豪雨、洪水、大雪など、毎年のように大規模な災害が発生し、保険会社の保険金支払い額は年々拡大しています。
2018年度の風水害等による保険金支払額は、火災保険で約1兆5,695億円と過去最大級の水準を記録しました。
保険会社は支払った保険金を保険料で賄う必要があるため、災害が増えれば保険料率を引き上げざるを得ません。この構造的な問題が、保険料の継続的な値上げにつながっています。
保険料率改定の推移
火災保険の参考純率(保険料の基準となる料率)は、損害保険料率算出機構が算出しています。近年の改定推移を見ると、値上げのペースが加速していることがわかります。
| 時期 | 参考純率の改定幅(全国平均) |
|---|---|
| 2019年10月 | 約4.9%の引き上げ |
| 2021年1月 | 約6.9%の引き上げ |
| 2022年10月 | 約10.9%の引き上げ |
| 2024年10月 | 約13.0%の引き上げ |
(出典:損害保険料率算出機構の火災保険参考純率改定に基づく。各保険会社の実際の保険料改定率は異なります)
注目すべきは改定幅が年々大きくなっている点です。2019年の約5%から2024年には約13%まで拡大しており、値上げ幅が加速しています。
契約期間の短縮も値上げの一因
2022年10月から、火災保険の最長契約期間が10年から5年に短縮されました。以前は長期契約で料率改定の影響を先送りにできましたが、5年ごとに更新が必要になったことで、値上げの影響を受けやすくなっています。
火災保険の値上げについて詳しくは火災保険の値上げはなぜ?推移と今後の見通しで解説しています。
対策1: 補償内容の見直し
値上げ対策として効果が大きいのが、補償内容の見直しです。現在の補償内容を確認し、本当に必要な補償だけに絞ることで、保険料を適正化できます。

補償内容の見直しといっても、何から手をつければいいのかわかりません。具体的にどの補償を見直すべきですか。
見直すべき主な補償項目
火災保険の補償内容を見直す際は、以下の項目を優先的にチェックしましょう。
- 水災補償: 保険料への影響が大きい項目。ハザードマップで浸水リスクが低ければ見直し対象になる
- 個人賠償責任保険特約: 他の保険との重複がないか確認
- 家財の補償額: 実際の家財の総額と補償額が乖離していないか確認
- 破損・汚損補償: お子さんが成長して不要になるケースがある
- 各種費用保険金: 残存物取片付け費用や臨時費用など、自動セットの費用保険金の内容を把握
補償見直しの具体的な手順
補償内容の見直しは次の手順で進めるとスムーズです。
- 現在の保険証券で加入中の補償内容を確認する
- 国土交通省のハザードマップポータルサイトで自宅の浸水リスクを調べる
- 他の保険との補償の重複がないか確認する
- 家族構成やライフスタイルの変化に合わせて必要な補償を再検討する
- 複数の保険会社に見積もりを依頼して比較する
補償内容の見直しについてさらに詳しくは火災保険の見直しガイドを参照してください。また、どの補償が不要かの判断基準は火災保険のいらない補償で解説しています。
対策2: 水災5段階料率の活用

2024年10月の保険料率改定で導入された水災5段階料率は、値上げ対策の大きなチャンスです。この制度を正しく理解して活用することで、浸水リスクの低い地域にお住まいの方は保険料を抑えられる可能性があります。
水災5段階料率とは
従来、火災保険の水災料率は全国一律でした。川の近くに住んでいても、高台に住んでいても、水災の保険料は同じだったのです。しかし 2024年10月の改定から、水災リスクに応じた5段階の料率区分が導入されました。
| 料率区分 | リスクの目安 |
|---|---|
| 1等地(最もリスクが低い) | 浸水被害の可能性がほぼない地域 |
| 2等地 | 浸水リスクが低い地域 |
| 3等地 | 平均的なリスクの地域 |
| 4等地 | 浸水リスクがやや高い地域 |
| 5等地(最もリスクが高い) | 河川沿いや低地など浸水リスクが高い地域 |
自宅の水災等地の確認方法
自宅がどの料率区分に該当するかは、以下の方法で確認できます。
- 保険会社や保険代理店に問い合わせる
- 更新時の見積書で水災の料率区分を確認する
- 国土交通省のハザードマップポータルサイトで大まかなリスクを把握する
ハザードマップで浸水想定区域に入っていない地域は、1等地や2等地に該当する可能性が高いです。この場合、水災補償をつけたまま保険料を抑えられることがあります。

高台に住んでいるので水災のリスクは低いと思いますが、水災補償を完全に外してしまっても大丈夫でしょうか。
水災補償の要否判断について詳しくは火災保険の水災補償はいらない?で解説しています。
対策3: 免責金額の設定
免責金額(自己負担額)を設定することで、保険料を抑えることができます。免責金額とは、損害が発生した際に自分で負担する金額のことで、この金額を超えた部分が保険金として支払われます。
免責金額の仕組み
たとえば免責金額を5万円に設定した場合、損害額が8万円であれば3万円が保険金として支払われます。損害額が5万円以下の場合は保険金の支払い対象にはなりません。
免責金額には主に2つのタイプがあります。
- フランチャイズ方式: 損害額が免責金額を超えた場合、損害額の全額が支払われる
- エクセス方式(免責方式): 損害額から免責金額を差し引いた金額が支払われる
現在は多くの保険会社がエクセス方式を採用しています。
免責金額の設定額と保険料への影響
免責金額は一般的に 0円、1万円、3万円、5万円、10万円、20万円などから選択できます。免責金額を高くするほど保険料は安くなりますが、万が一の際の自己負担が増えます。
免責金額設定の注意点
免責金額を設定する際は以下の点に注意してください。
- 補償項目ごとに免責金額を設定できる保険会社が多い
- 水災や風災など発生頻度の高い補償の免責金額は慎重に検討する
- 貯蓄に余裕がない場合は免責金額を低めに設定する
- 築古物件では保険会社から一定の免責金額の設定を条件にされることもある
対策4: 長期契約で割引を受ける
火災保険は長期契約にすることで割引が適用されます。現在の最長契約期間は5年ですが、1年契約を毎年更新するよりも5年契約にしたほうが保険料の総額が安くなります。
長期契約のメリット
長期契約には次のメリットがあります。
- 長期係数による割引で保険料の総額が安くなる
- 契約期間中は保険料率の改定があっても保険料が変わらない
- 更新手続きの手間が減る
- 今後の値上げを見越して、改定前の料率で契約を確保できる
長期契約の支払方法による違い
5年契約の支払方法には一括払いと年払いがあり、一括払いのほうが総額は安くなります。
- 5年一括払い: 割引率が高い。まとまった支出になるが総額は割安になる傾向がある
- 年払い(長期分割): 毎年の支出を平準化できる。一括払いより割引率は小さい
火災保険の契約期間について詳しくは火災保険の契約期間で解説しています。
対策5: 複数社の比較で最適な保険を選ぶ
火災保険は保険会社によって保険料に差があります。同じ補償内容でも保険会社が異なれば保険料が数千円から数万円変わることがあるため、複数社を比較することが重要です。
なぜ保険会社によって保険料が違うのか
保険会社はそれぞれ独自の料率を設定しています。損害保険料率算出機構が算出する参考純率はあくまで「参考」であり、保険会社はそれを踏まえて自社の料率を決めます。各社の経営方針、損害率、引き受け基準の違いが保険料の差に反映されています。
比較のポイント
複数社を比較する際は、以下のポイントを確認しましょう。
- 保険料だけでなく補償内容を揃えて比較する
- 各社の特約ラインナップの違いを確認する
- 事故時の対応体制やサービスの評判も参考にする
- Web割引や新規割引など、各社独自の割引制度を確認する
- 免責金額の設定パターンが保険会社によって異なる場合がある

複数の保険会社を自分で比較するのは大変そうです。効率よく比較する方法はありますか。
火災保険の選び方については火災保険の選び方で、見積もりの取り方については火災保険の見積もりで詳しく解説しています。
やってはいけない値上げ対策
ここまで5つの値上げ対策を紹介してきましたが、やり方を間違えると逆効果になる対策もあります。保険料を下げることばかりに意識が向くと、本来の目的である「万が一への備え」がおろそかになりかねません。
必要な補償まで外してしまう
保険料を安くするために、本当に必要な補償まで外してしまうのは最も避けるべき対策です。
たとえば以下のようなケースは注意が必要です。
保険金額を低く設定しすぎる
建物の再調達価額(同等の建物を新たに建築する際に必要な金額)より大幅に低い保険金額を設定すると、保険料は安くなりますが、万が一の際に十分な保険金を受け取れない可能性があります。
建物を再建するのに3,000万円かかるところを1,500万円の保険金額で契約した場合、全損でも1,500万円しか支払われません。適正な保険金額の設定は火災保険の保険金額の決め方で解説しています。
火災保険に入らない選択
保険料の値上げを理由に「火災保険に入らない」という選択は非常にリスクが高いです。火災や自然災害で建物が大きな被害を受けた場合、修理・再建費用は数百万円から数千万円に上ることがあります。
火災保険の必要性については火災保険とは?で詳しく解説しています。
地震保険への影響も忘れない
地震保険は火災保険に付帯して加入する仕組みです。火災保険の補償内容を見直す際は、地震保険の保険金額にも影響が出る場合がある点を覚えておきましょう。地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲で設定し、建物5,000万円・家財1,000万円が上限です。また、1回の地震等による保険金の総支払限度額は12兆円と定められています。火災保険の保険金額を変更すると地震保険も見直しが必要になることがあります。なお、地震・噴火・津波による損害は火災保険では補償されないため、これらのリスクに備えるには地震保険への加入が必要です。
5つの対策を組み合わせて最大の効果を得る
ここまで紹介した5つの対策は、単独でも効果がありますが、組み合わせることでより大きな保険料削減が期待できます。
対策の組み合わせ例
戸建て住宅にお住まいの方が5つの対策をすべて組み合わせた場合のイメージです。
- 補償内容の見直しで不要な特約を整理する
- ハザードマップで浸水リスクが低いことを確認し、水災5段階料率の低い区分を適用する
- 免責金額を5万円に設定して保険料を下げる
- 5年契約の一括払いで長期割引を受ける
- 3〜4社に見積もりを依頼し、最も条件のよい保険会社を選ぶ
これらを組み合わせることで、見直し前と比較して年間で数千円から数万円の保険料削減につながるケースがあります。ただし削減額は物件の条件や現在の契約内容によって異なります。
見直しのタイミング
対策に着手する最適なタイミングは次のとおりです。
- 現在の火災保険の更新時期が近づいたとき
- 保険料率の改定が発表されたとき(改定前に長期契約を検討)
- ライフスタイルに変化があったとき
- 保険料の負担が大きいと感じたとき
更新の2〜3ヶ月前から準備を始めると、複数社の比較や補償内容の検討に十分な時間が取れます。
この記事のまとめ
- 火災保険の値上げは自然災害の増加が主な原因で、今後も続く可能性がある
- 対策1: 補償内容の見直しが効果的。水災補償、特約の重複、家財の補償額をチェック
- 対策2: 2024年10月導入の水災5段階料率を活用し、低リスク地域では水災補償をつけたまま保険料を抑えられる
- 対策3: 免責金額を5万円前後に設定することで手軽に保険料を削減できる
- 対策4: 5年契約の一括払いで長期割引と料率改定前の価格を確保できる
- 対策5: 最低3〜4社を比較して最適な保険を選ぶことが重要
- 保険料の安さだけを追求せず、適正な補償を維持することが最も大切
よくある質問
火災保険の値上げ対策で最も効果が大きいのは何ですか?
補償内容の見直しが最も効果的です。特に水災補償の要否をハザードマップで確認し、リスクが低い地域では水災5段階料率の最も低い区分が適用されることで、保険料の削減が期待できます。
水災5段階料率とは何ですか?
2024年10月から導入された水災リスクの地域別料率制度です。全国一律だった水災料率が5段階に細分化され、浸水リスクの低い地域では保険料が下がる仕組みになっています。
火災保険の値上げ対策として補償を外すのはリスクがありますか?
保険料を下げたいからといって必要な補償まで外すのは危険です。万が一の際に保険金が出ない事態になりかねません。適正な補償を維持しながら、不要な部分だけを見直すことが大切です。
免責金額を設定するとどのくらい保険料が安くなりますか?
免責金額の設定額や保険会社によって異なりますが、一般的に免責金額を5万円に設定すると年間で数千円程度の保険料削減が期待できます。ただし、小さな損害は自己負担になる点を理解した上で設定しましょう。
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