火災保険の選び方|失敗しない5ステップ
この記事のポイント
火災保険の選び方は補償範囲の決定・保険金額の設定・特約選び・契約期間・複数社比較の5ステップで進めると失敗しません。12社以上を扱う専門家が比較フレームワークと判断基準を解説します。
火災保険を選ぶとき、「どの保険会社がいいのか」「補償はどこまでつけるべきか」と悩む方は多いのではないでしょうか。保険料の安さだけで選んでしまい、いざという時に補償が足りなかったというケースも少なくありません。
火災保険の選び方は、補償範囲の決定、保険金額の設定、特約選び、契約期間の決定、複数社での比較という5つのステップで進めることで、過不足のない保険設計ができます。この記事では、30年以上の経験を持つ保険の専門家への取材をもとに、火災保険選びの具体的な手順と比較の際に使えるフレームワークを解説します。

火災保険の選び方 5つのステップ
火災保険を正しく選ぶには、やみくもに見積もりを取るのではなく、段階を踏んで進めることが大切です。以下の5ステップに沿って進めれば、自分に合った保険を選べます。
ステップ1: 補償範囲を決める
火災保険選びの出発点は、どのリスクに備えるかを決めることです。火災保険は火事だけでなく、風災、水災、盗難、破損汚損など幅広い損害を補償する「住まいの総合保険」です。
基本の補償項目は以下のとおりです。
- 火災、落雷、破裂・爆発
- 風災、雹災、雪災
- 水災(洪水、土砂崩れ、高潮)
- 水濡れ(漏水など)
- 盗難
- 破損・汚損
このうち火災・落雷・破裂爆発はほぼ全ての契約に含まれる基本補償です。それ以外の補償は、お住まいの環境やライフスタイルに応じてつけるか外すかを判断します。

補償を全部つけたほうが安心ではないですか?全部つけるのはダメなのでしょうか
補償範囲の詳しい選び方については、この記事の後半の「補償内容の選び方」で項目ごとに解説します。
ステップ2: 保険金額を設定する
次に、補償の上限額となる保険金額を決めます。保険金額は「建物」と「家財」の2つに分けて設定します。
建物の保険金額は再調達価額(同等の建物を新たに建築する費用)で設定するのが基本です。購入価格ではなく、現在の建築費用をもとに算出する点がポイントになります。
家財の保険金額は、家族構成や所有する家財の総額を考慮して設定します。保険会社が提供する「簡易評価表」を参考にすると目安がわかります。
保険金額の詳しい設定方法は「保険金額の正しい決め方」の章で解説します。
ステップ3: 特約を選ぶ
基本補償に加えて、特約(オプション)でさらに補償を手厚くすることができます。代表的な特約は以下のとおりです。
- 個人賠償責任特約: 日常生活で他人にケガをさせたり他人の物を壊した場合に補償
- 類焼損害補償特約: 自宅からの出火で近隣の建物に損害を与えた場合に補償
- 臨時費用特約: 事故後の仮住まい費用などを補償
- 建物付属機械設備特約: エアコン室外機やディスポーザーなど建物付属の電気設備の故障を補償
特約は便利ですが、他の保険と補償が重複している場合があります。特に個人賠償責任特約は自動車保険やクレジットカードに付帯していることが多いため、重複を確認しましょう。
ステップ4: 契約期間を決める
火災保険の契約期間は1年から最長5年まで選べます。2022年10月の改定以降、最長期間が10年から5年に短縮されました。
| 契約期間 | メリット |
|---|---|
| 1年 | 毎年見直しやすい |
| 5年(一括払い) | 長期割引で保険料負担を軽減しやすい |
一般的には5年の長期契約の方が保険料の総額で見ると負担が軽くなる傾向にあります。ただし、近々引っ越しの予定がある方やリフォームを検討中の方は、短期契約も選択肢になります。
ステップ5: 複数社で比較する
最後に、同じ条件で複数の保険会社から見積もりを取り、比較検討します。この「複数社比較」は保険選びにおいて特に重要なステップです。
比較の具体的な方法は「保険会社を比較するフレームワーク」の章で詳しく解説します。
補償内容の選び方(何をつける・何を外す)
ステップ1で触れた補償範囲について、各補償項目の判断基準を具体的に解説します。補償内容の選び方は火災保険の補償内容と保険金額の決め方でも詳しく取り上げていますので、あわせてご参照ください。
火災・落雷・破裂爆発(基本補償)
この3つはほぼ全ての火災保険に含まれる基本補償です。外すことはできないのが一般的なので、そのまま含めておきましょう。
日本には「失火法」があり、隣家の火事で自宅が延焼しても、火元に重大な過失がない限り損害賠償を請求できません。火災補償は自分の家を守るために不可欠な補償です。
風災・雹災・雪災
台風や突風、雹(ひょう)、大雪による損害を補償します。近年は台風の大型化やゲリラ雹害の増加で、この補償の重要性が高まっています。
日本のどの地域でも台風や突風のリスクはゼロではないため、基本的にはつけておくことが推奨される補償です。なお、保険会社によっては風災・雹災・雪災の補償に免責金額が設定されている場合や、損害額が一定金額以上でないと保険金が支払われない要件がある場合があります。契約前に支払い条件を確認してください。風災補償の詳しい解説はこちらをご確認ください。
水災(洪水・土砂崩れ・高潮)
水災補償は保険料への影響が大きい項目です。つけるか外すかの判断には、お住まいの地域の浸水リスクを確認することが欠かせません。
判断の基準は以下のとおりです。
- つけた方がよい場合: ハザードマップで浸水想定区域に該当する、河川や低地の近くに住んでいる、過去に浸水被害があった地域
- 外す選択肢がある場合: ハザードマップで浸水リスクが低い、マンション高層階に住んでいる、高台に住んでいる
水災補償の要否について詳しくは火災保険の水災補償は本当にいらないのかをご確認ください。

水濡れ(漏水)
給排水設備の事故や上階からの漏水による損害を補償します。特にマンションにお住まいの方にとっては重要度の高い補償です。戸建ての方も、築年数が経過していれば配管トラブルのリスクがあるため、つけておくことをおすすめします。
盗難
空き巣や強盗による家財の盗難や、侵入時の窓ガラス・ドア破損を補償します。一戸建てや1〜2階にお住まいの方は特に検討すべき補償です。マンション高層階でオートロック付きの場合は、リスクが低いため優先度は下がります。
破損・汚損
日常生活での偶然な事故による損害を補償します。例えば、子どもが遊んでいてテレビを壊した、掃除中に家具をぶつけて壁に穴を開けた、といったケースが対象です。

破損汚損は必要ですか?使う機会はあるのでしょうか
補償内容の判断早見表
以下の表を参考に、お住まいの状況に応じて補償の要否を判断してください。
| 補償項目 | 一戸建て | マンション |
|---|---|---|
| 火災・落雷・破裂爆発 | 必須 | 必須 |
| 風災・雹災・雪災 | 必須 | 推奨 |
| 水災 | ハザードマップで判断 | 高層階は外す選択肢あり |
| 水濡れ | 推奨 | 必須 |
| 盗難 | 推奨 | 状況により判断 |
| 破損・汚損 | 子どもがいれば推奨 | 子どもがいれば推奨 |
保険金額の正しい決め方
ステップ2で触れた保険金額の設定について、建物と家財それぞれの考え方を解説します。保険金額は高すぎても低すぎてもいけません。適正な金額を設定することが、無駄のない保険設計の鍵になります。
建物の保険金額は「再調達価額」で決める
建物の保険金額は再調達価額(同等の建物を新たに建築する費用)で設定するのが基本です。注意が必要なのは、購入時の価格ではなく「今建てたらいくらかかるか」で考えるという点です。
例えば20年前に2,000万円で建てた家が、資材や人件費の高騰により現在では3,000万円かかるとします。この場合、保険金額は3,000万円に設定する必要があります。
損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況」によると、保険金額は保険の対象と同等のものを再築・再取得するために必要な金額(再調達価額)で設定することが推奨されています。
2つの評価方法
保険会社が建物の再調達価額を算出する方法は、主に2つあります。
- 新築費単価法: 新築時の建築価額がわからない場合に使う方法。保険会社が把握する平米単価に延べ床面積をかけて算出する
- 年次別指数法: 新築時の建築価額がわかっている場合に使う方法。建築時の費用に物価上昇率などの係数をかけて現在の価値に換算する
どちらの方法を使っても、保険会社の試算ツールで簡単に算出できます。見積もりの取り方について詳しくはこちらをご参照ください。
家財の保険金額の目安
家財の保険金額は、家族構成や生活スタイルによって大きく変わります。保険会社が提供する簡易評価表では、以下のような目安が示されています。
| 家族構成 | 家財の目安金額 |
|---|---|
| 独身(20〜30代) | 300万〜400万円 |
| 夫婦のみ | 500万〜700万円 |
| 夫婦+子ども | 800万〜1,200万円 |
ただし、これはあくまで目安です。高額な家電や趣味の道具がある方は多めに、最低限の家財しかない方は少なめに設定するなど、実態に合わせた調整が必要です。
家財の保険金額について詳しくは火災保険の家財補償ガイドをご確認ください。
保険金額を低く設定するリスク
保険料を抑えたいがために保険金額を低く設定すると、以下のような問題が生じます。
- 全損時に同等の建物を建て直せない
- 部分的な損害でも保険金が不足する可能性がある
- 保険金額が再調達価額の80%未満の場合、比例填補が適用される保険会社もある
保険料の節約は補償範囲の見直しで行い、保険金額はできるだけ再調達価額に合わせて設定することをおすすめします。
保険会社を比較するフレームワーク
ステップ5で触れた複数社比較について、具体的な比較方法を解説します。
比較すべき5つのポイント
火災保険を比較する際は、以下の5つの視点でチェックするとよいでしょう。
- 保険料: 同じ補償内容での年間保険料、長期契約の割引率
- 補償の自由度: 不要な補償を外せるか、特約の種類は豊富か
- 保険金の支払い条件: 免責金額、支払い基準(水災の場合の床上浸水要件など)
- 事故対応・サポート体制: 24時間事故受付の有無、事故対応の評判
- 付帯サービス: 水回りトラブルの応急対応、鍵開けサービスなど
比較表の例
以下のような形式で整理すると、比較がしやすくなります。
| 比較項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 年間保険料 | 自社の見積もりで確認 | 自社の見積もりで確認 |
| 水災補償の条件 | 床上浸水または地盤面45cm以上 | 同左+オプションあり |
| 破損汚損の免責金額 | 5万円 | 1万円 |
実際の保険料は条件によって異なるため、必ず同一条件で見積もりを取ったうえで比較してください。
銀行・不動産会社経由で加入するリスク
住宅ローンを組む際、金融機関から火災保険を勧められるケースは多くあります。また、住宅購入時に不動産会社が提案する保険もあります。
銀行や不動産会社経由で加入する場合のデメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 選択肢が1〜2社に限られる
- 保険の専門家ではないため詳しいアドバイスが受けにくい
- 事故が起きた際のサポートが手薄になる可能性がある
一方、専門の保険代理店に相談するメリットとしては以下があります。
- 複数社(10社以上)から比較検討できる
- 補償内容について専門的なアドバイスが受けられる
- 事故時に保険会社との間に入ってサポートしてもらえる
火災保険選びで失敗しないための注意点
ここまでの5ステップと比較フレームワークに加えて、火災保険選びで見落としがちな注意点を解説します。
注意点1: 保険料の安さだけで選ばない
保険料を下げたいという気持ちは当然ですが、安さだけを追求すると必要な補償が欠けてしまう危険があります。まず必要な補償内容を決めてから、その条件で最も保険料が抑えられる保険会社を探すという順番が大切です。
保険料が上がっている背景として、自然災害の増加と建築費の高騰があります。損害保険料率算出機構が定める参考純率が近年繰り返し改定されており、どの保険会社でも保険料は上昇傾向にあります。この流れは今後も続くと見られています。
注意点2: 地震保険の付帯を忘れない
火災保険では地震・噴火・津波による損害は一切補償されません。地震が原因で発生した火災(地震火災)も対象外です。地震リスクに備えるには、火災保険にセットして地震保険に加入する必要があります。
地震保険は火災保険金額の30〜50%の範囲で設定でき、保険料は政府と保険会社が共同で運営する制度のため、どの保険会社で加入しても同一です。
注意点3: 保険金額は定期的に見直す
物価上昇や建築費の変動により、数年前に設定した保険金額が現在の再調達価額と乖離していることがあります。特に近年は資材費や人件費の高騰が続いているため、契約更新時には保険金額が適正かどうかを確認しましょう。
注意点4: 免責金額の仕組みを理解する
免責金額とは、保険金が支払われる際の自己負担額です。免責金額を高く設定すると保険料は下がりますが、小さな損害では保険金が出なくなります。
例えば免責金額を5万円に設定した場合、3万円の損害では保険金は支払われません。10万円の損害なら、5万円を差し引いた5万円が保険金として支払われます。
免責金額は補償ごとに設定できる保険会社もあります。破損汚損のように請求頻度の高い補償は免責金額を低めに、水災のように大きな損害が前提の補償は免責金額を高めに設定するという考え方もあります。
注意点5: 事故対応力も重視する
火災保険は万が一の時のための保険です。いざ事故が起きた時にどれだけスムーズに保険金を受け取れるかは、加入する保険会社や代理店の対応力に左右されます。
注意点6: 質権設定の確認
住宅ローンを組んで火災保険に加入する場合、金融機関によっては「質権設定」を求められることがあります。質権設定とは、火災保険の保険金の受取人を金融機関にする制度です。近年はほとんどの金融機関で質権設定を求めなくなっていますが、念のため確認しておくとよいでしょう。
この記事のまとめ
- 火災保険選びは補償範囲、保険金額、特約、契約期間、複数社比較の5ステップで進める
- 補償内容はお住まいの環境やライフスタイルに応じて見直し、保険料を下げるなら補償範囲の調整が効果的
- 水災補償はハザードマップで浸水リスクを確認して判断するが、内水氾濫のリスクも考慮して安易に外さないことが推奨される
- 保険金額は購入価格ではなく再調達価額(今建てたらいくらかかるか)で設定する
- 銀行や不動産会社経由では選択肢が1〜2社に限られるため、専門の保険代理店で3〜4社以上を比較するのが望ましい
- 保険料の安さだけでなく、補償の適正さと事故時の対応力を含めたバランスで選ぶ
- 地震・噴火・津波による損害は火災保険では補償されないため、地震保険の付帯も忘れずに検討する
よくある質問
火災保険を選ぶときに最低何社比較すればよいですか?
最低でも3〜4社は比較することをおすすめします。銀行や不動産会社経由では1〜2社しか選択肢がないことが多いですが、専門の保険代理店では12〜13社から比較提案が可能です。同じ補償内容でも保険会社によって数万円の差が出ることがあります。
火災保険の水災補償は外しても大丈夫ですか?
ハザードマップで浸水リスクが低い地域にお住まいであれば外す選択肢もあります。ただし近年は河川の氾濫だけでなく、排水処理能力を超えた内水氾濫のリスクもあるため、安易に外さず専門家に相談することをおすすめします。
火災保険の保険金額はどう設定すればよいですか?
建物の保険金額は再調達価額(同等の建物を新たに建築する費用)で設定するのが基本です。購入価格や時価ではなく、現在の建築費用をもとに算出します。物価上昇により建築費が上がっている場合は保険金額も見直す必要があります。
銀行や不動産会社で火災保険に入るのはダメですか?
ダメではありませんが、選択肢が1〜2社に限られるため比較が十分にできません。保険代理店に相談すれば複数社から条件に合った保険を選べます。また事故が起きた際に専門家のサポートを受けられる点も代理店のメリットです。
火災保険料を安くするにはどうすればよいですか?
保険料を下げるには補償内容の見直しが最も効果的です。不要な補償を外す、免責金額を設定する、長期契約にするなどの方法があります。ただし保険料を下げることだけに注目せず、必要な補償が確保されているかを優先してください。
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