火災保険の保険金額の決め方|5ステップで適正額を設定
この記事のポイント
火災保険の保険金額は再調達価額で設定し、新価実損払いを選ぶのが基本です。保険金額を決める5つのステップ、新価と時価の違い、建物・家財の評価方法を専門家への取材をもとに解説します。
火災保険に加入する際、「保険金額をいくらに設定すればよいのか」と悩む方は多いのではないでしょうか。保険金額が低すぎれば万が一の時に十分な補償を受けられず、高すぎれば保険料の無駄になってしまいます。
結論として、火災保険の保険金額は再調達価額(同等のものを新たに建築・購入する費用)で設定し、支払い方式は新価実損払いを選ぶことで、万が一の損害時にも生活再建の原資となる適正な補償設計が可能になります。この記事では、保険金額の決め方を 5 つのステップで整理し、新価実損払いと時価払いの違いや、建物・家財それぞれの評価方法を専門家への取材をもとに解説します。

保険金額を決める 5 つのステップ
火災保険の保険金額は、なんとなく金額を決めるのではなく、段階を踏んで設定することが大切です。ここでは、保険金額を適正に設定するための 5 つのステップを順に解説します。
ステップ 1: 保険の対象を確認する
火災保険でカバーする対象は「建物」と「家財」の 2 つに分かれます。持ち家の場合は建物と家財の両方、賃貸住宅の場合は家財のみが保険の対象になるのが一般的です。
まず自分の住まいが持ち家なのか賃貸なのかを確認し、保険をかける対象を明確にしましょう。なお、地震・噴火・津波による損害は火災保険では補償されないため、これらのリスクに備えるには別途地震保険の付帯が必要です。
| 住居形態 | 保険の対象 |
|---|---|
| 持ち家 | 建物 + 家財 |
| 賃貸 | 家財のみ(原則) |
| 分譲マンション | 専有部分の建物 + 家財 |
ステップ 2: 建物の再調達価額を算出する
建物の保険金額は「再調達価額」で設定するのが基本です。再調達価額とは、同等の建物を現在の物価水準で新たに建築するために必要な費用のことです。
再調達価額の評価方法には 2 種類あります。新築時の建築価額がわかっているかどうかで使い分けます。
- 新築費単価法: 新築時の建築価額がわからない場合に使う方法。保険会社が把握している平米単価に延べ床面積をかけて算出する
- 年次別指数法: 新築時の建築価額がわかっている場合に使う方法。建築当時の価額に物価上昇の係数をかけて現在の価値に換算する
評価方法の詳細は後述の「建物の保険金額の決め方」で解説します。
ステップ 3: 家財の総額を見積もる
家財の保険金額は、家の中にある生活用品を全て新品で買い直した場合にいくらかかるかで設定します。家具、家電、衣類、食器など、カテゴリ別に金額を積み上げて計算する方法が確実です。

家財の保険金額はまとめていくらで申告すればいいですか?
世帯構成別の家財保険金額の目安は以下のとおりです。
| 世帯構成 | 保険金額の目安 |
|---|---|
| 一人暮らし | 100〜300 万円 |
| 夫婦 2 人 | 300〜500 万円 |
| ファミリー(子どもあり) | 500〜800 万円 |
家財保険金額の詳しい設定方法は火災保険の家財保険金額はいくらに設定すべきかで解説しています。
ステップ 4: 支払い方式を選ぶ
保険金額の設定と同様に重要なのが、保険金の「支払い方式」の選択です。支払い方式には「新価実損払い」と「時価払い」の 2 種類があります。
一般的には、新価実損払いを選ぶことが推奨されています。時価払いを選んでしまうと、受け取れる保険金が大幅に減ってしまう可能性があります。新価実損払いと時価払いの違いは次のセクションで詳しく解説します。
ステップ 5: 複数社で見積もりを比較する
保険金額と補償内容が決まったら、必ず複数の保険会社で見積もりを取って比較しましょう。同じ保険金額・同じ補償内容であっても、保険会社によって保険料は異なります。
保険料の安さだけでなく、事故対応の質や補償の細かな違いも含めて総合的に判断することが大切です。火災保険の見積もり方法については火災保険の見積もりの取り方で詳しく解説しています。
新価実損払いと時価払いの違い
保険金額をいくらに設定するかと同じくらい重要なのが、保険金の支払い方式です。「新価実損払い」と「時価払い」では、受け取れる保険金の額が大きく異なります。ここでは両者の違いと、なぜ新価実損払いが推奨されるのかを解説します。
新価実損払いとは
新価実損払いとは、損害を受けた建物や家財を再購入・再建築するために必要な金額(新価)を基準に、実際の損害額をそのまま支払う方式です。
たとえば、築 20 年の建物が全焼した場合、新価実損払いでは「同等の建物を現在の物価で新築するための費用」が保険金として支払われます。建物が古くなっていても、再建に必要な金額が全額カバーされるのが特徴です。
時価払いとは
時価払いとは、新価から経年劣化分(減価償却)を差し引いた金額で保険金が支払われる方式です。
たとえば、新築時に 2,000 万円だった建物が築 20 年を経過し、時価が 1,000 万円と評価された場合、全焼しても支払われる保険金は 1,000 万円となります。これでは同じ建物を建て直すことはできません。
新価実損払いと時価払いの比較
両者の違いを具体的な数字で比較すると、その差は歴然です。
| 項目 | 新価実損払い | 時価払い |
|---|---|---|
| 支払い基準 | 再調達に必要な金額 | 新価 - 減価償却 |
| 築 20 年の建物例 | 再建費用 2,000 万円を支払い | 時価 1,000 万円のみ支払い |
| メリット | 生活を元通りに再建できる | 保険料がやや安い |
| デメリット | 保険料がやや高い | 受取額が大幅に不足する可能性あり |
新価実損払いであれば、万が一の損害時にも同等の住まいを再建できます。一方、時価払いでは減価償却分が差し引かれるため、特に築年数の古い建物では受取額が大幅に不足するリスクがあります。
保険金の支払い方式は、契約時に選択できます。保険料の差は支払い方式による補償額の違いに比べればわずかなため、新価実損払いを選んでおくことをおすすめします。
建物の保険金額の決め方
建物の保険金額は、保険の中でも最も金額が大きくなる部分です。適正な金額を設定するためには、現在の建築コストに基づいた「再調達価額」を正確に把握することが重要です。
再調達価額の考え方
再調達価額とは、保険の対象となる建物と同等のものを現時点で新たに建築するために必要な費用のことです。中古住宅であっても、築年数に応じて価値を下げるのではなく、今同じ建物を新しく建てるための費用で評価します。
近年は人件費や建材費の高騰により、同じ建物を建てるためのコストが上昇しています。そのため、建築当時の価格で保険金額を設定していると、実際の再建費用に足りなくなるケースが増えています。保険金額は購入価格ではなく、現在の再調達価額で設定することが重要です。
建築価額の確認方法
建築価額を確認する方法は大きく 2 つあります。いずれも保険会社の試算ツールを使って算出します。
1 つ目は「新築費単価法」です。新築時の建築価額がわからない場合に使われます。中古住宅を購入した方など、建築当時の費用が不明な方はこちらの方法を使います。
| 評価方法 | 計算式 | 使用する場面 |
|---|---|---|
| 新築費単価法 | 平米単価 × 延べ床面積 | 新築時の建築価額がわからない場合 |
| 年次別指数法 | 新築時の建築価額 × 物価上昇の係数 | 新築時の建築価額がわかる場合 |
2 つ目は「年次別指数法」です。新築時の建築価額がわかっている場合に使われます。新築で建てた方や、建築時の契約書が残っている方はこちらを使います。
年次別指数法では、建築当時の価額に物価上昇率や人件費上昇率などの係数をかけて、現在の再調達価額を算出します。たとえば 30 年前に 3,000 万円で建てた建物が、物価上昇の係数を加味すると現在は 4,500 万円と評価されることもあります。

評価額は保険会社が決めた金額のままにしなければいけませんか?
保険会社の試算ツールで算出された評価額は、あくまで標準的な金額です。実際には高級な部材を使用している場合は上方修正、一般的な仕様より簡素な場合は下方修正が可能です。調整可能な範囲は評価額の 70%〜130%で、保険会社の担当者と相談しながら決めていきます。
建築価額確認に必要な書類
建物の評価をスムーズに進めるために、以下の書類を用意しておくと便利です。
- 建築請負契約書(新築時の建築価額を確認するため)
- 建物の登記簿謄本(構造、延べ床面積、築年数を確認するため)
- 火災保険の保険証券(現在の保険金額を確認するため)
- 増改築やリフォームの見積書・領収書(追加費用を反映するため)
これらの書類が手元にない場合でも、保険会社の試算ツールを使えば新築費単価法で概算を算出できます。火災保険の見積もりを依頼する際にあわせて確認しましょう。
家財の保険金額の決め方
家財の保険金額は建物とは異なり、世帯の生活状況に応じて大きく変わります。家の中にある全てのものを新品で買い直した場合の合計額を基準に設定します。
家財の積み上げ算定法
家財の保険金額を最も正確に設定する方法が「積み上げ算定法」です。所有している家財をカテゴリ別に分けて、それぞれの再調達価額を足し合わせて合計額を算出します。
主なカテゴリは以下のとおりです。
- 家電製品: テレビ、冷蔵庫、洗濯機、パソコン、掃除機など
- 家具: ソファ、ベッド、ダイニングテーブル、食器棚、本棚など
- 衣類・寝具: 衣類全般、布団、毛布、枕など
- 食器・調理器具: 食器セット、鍋、フライパン、包丁など
- その他: カーテン、照明器具、腕時計、自転車(250cc 以下のバイクを含む)
全てを正確にリストアップするのは大変ですが、大きな金額になるもの(家電、家具)を中心に把握するだけでも、目安としては十分です。
家財に含まれるものと含まれないもの
家財の範囲は想像以上に広く、建物の中や敷地内の所定の場所に置かれているものが幅広く含まれます。一方で、約款で明確に除外されているものもあります。
家財に含まれるものの代表例は以下のとおりです。
- 家具・家電製品・衣類・食器など生活用品全般
- 敷地内の所定の場所に置かれた自転車や 250cc 以下のバイク
- 腕時計やカーテンなど
家財に含まれないものの代表例は以下のとおりです。
- スマートフォン
- 有価証券、プリペイドカード、電子マネー
- 動物・植物
- 自動車
1 点あたり 30 万円を超える貴金属、美術品、骨董品などは「明記物件」として保険証券に別途申告が必要です。申告しないと補償対象外になることがあるため、高額品をお持ちの方は注意してください。
家財の補償内容と保険金額の全体像は関連記事で詳しく解説しています。
保険金額の設定で注意すべきポイント
保険金額の設定を誤ると、保険料の無駄遣いになったり、いざという時に十分な補償が受けられなかったりします。ここでは、保険金額の設定で起こりがちな 2 つのリスクを解説します。
超過保険のリスク
超過保険とは、保険金額が実際の再調達価額を超えて設定されている状態のことです。たとえば、再調達価額が 2,000 万円の建物に 3,000 万円の保険金額を設定するケースが該当します。
火災保険は実損払いが原則のため、保険金額を再調達価額より高く設定しても、実際に支払われる保険金は損害額(実損額)が上限となります。超過分の保険料は完全に無駄になってしまいます。
一部保険のリスク
一部保険とは、保険金額が実際の再調達価額を下回っている状態のことです。たとえば、再調達価額が 2,000 万円の建物に 1,000 万円の保険金額を設定するケースが該当します。
一部保険の状態では、損害が発生した場合に保険金が按分(比例払い)されることがあります。たとえば保険金額が再調達価額の 50%しかない場合、500 万円の損害が発生しても 250 万円しか支払われない可能性があります。
適正な保険金額を維持するコツ
超過保険にも一部保険にもならない適正な保険金額を設定するために、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 保険金額は再調達価額に合わせて設定する
- 評価額の 70%〜130%の範囲内で自分の建物に合った金額を選ぶ
- 支払い方式は新価実損払いを選択する
- 定期的に保険金額の見直しを行う
火災保険の選び方についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
保険金額の見直しが必要なタイミング
保険金額は一度設定したら終わりではありません。住まいの状況や物価の変動に応じて、定期的な見直しが必要です。
見直しが必要な 4 つのタイミング
保険金額の見直しが必要になる主なタイミングは以下の 4 つです。
- 増改築やリフォームをした時: 建物の価値が上がるため、保険金額の増額が必要になることがあります
- 火災保険の満期更新時: 物価変動による再調達価額の変化を確認し、保険金額を調整します
- 家族構成が変わった時: 家族が増えれば家財の量も増えるため、家財の保険金額を見直します。逆にお子様が独立されたら減額も検討できます
- 高額な家財を購入した時: 30 万円を超える貴金属や美術品は明記物件としての申告が必要です
物価上昇と保険金額の関係
近年の物価上昇は保険金額の見直しを特に重要なものにしています。人件費や建材費の高騰により、以前と同じ建物を建て直すためのコストが大幅に上がっているケースが増えています。
5 年前、10 年前に設定した保険金額のまま据え置いていると、現在の再調達価額に対して不足する可能性があります。火災保険の満期を迎えた際には、保険金額が現在の建築コストに見合っているかどうかを必ず確認しましょう。
火災保険の保険料が値上がりしている背景については火災保険の値上げで詳しく解説しています。また、見直しの具体的な手順は火災保険の見直しガイドを参考にしてください。
小規模事務所や店舗の保険金額の考え方
個人の住宅だけでなく、小規模な事務所や店舗の火災保険でも保険金額の設定は重要です。個人事業主やスタートアップ経営者の方向けに、事業用物件の保険金額の考え方を簡単に紹介します。
事務所の場合の保険金額の目安
小規模な事務所(2〜3 人程度)の場合、保険をかける対象はパソコン、デスク、椅子などの事務用備品が中心になります。
賃貸の事務所であれば、建物自体はオーナーの所有なので保険の対象外です。自社の備品(什器・設備)に対して保険をかけることになります。IT 企業などでサーバーや高額な機器を所有している場合は、それらの再調達価額を加算して保険金額を設定する必要があります。
なお、事務所や店舗は住宅用の火災保険とは別の商品(企業総合保険など)で加入する点に注意が必要です。詳しくは火災保険 店舗向けで解説しています。
この記事のまとめ
- 保険金額は再調達価額(同等のものを現在の物価で建築・購入する費用)で設定するのが基本
- 支払い方式は「新価実損払い」を選ぶことで、万が一の時にも生活を再建できる十分な保険金が受け取れる
- 建物の評価には新築費単価法と年次別指数法の 2 種類があり、建築当時の価額がわかるかどうかで使い分ける
- 物価上昇により再調達価額は変動するため、満期更新時や増改築時に保険金額を定期的に見直すことが重要
- 地震・噴火・津波による損害は火災保険では補償されないため、別途地震保険の付帯を検討する
よくある質問
火災保険の保険金額はどうやって決めますか?
保険金額は再調達価額(同等の建物を新築・再購入するための費用)で設定するのが基本です。建物は新築費単価法や年次別指数法で評価額を算出し、その 70%〜130%の範囲で調整します。家財は世帯構成と所有物の内容から積み上げ方式で算出します。
新価実損払いと時価払いの違いは何ですか?
新価実損払いは同等品を再購入・再建築するための費用が全額補償される方式です。時価払いは新価から経年劣化分(減価償却)を差し引いた金額での支払いとなるため、受取額が大幅に減る可能性があります。多くの専門家は新価実損払いを推奨しています。
保険金額を高く設定しすぎるとどうなりますか?
保険金額を再調達価額より高く設定しても、実際の損害額(実損額)を超える保険金は支払われません。超過分の保険料が無駄になるだけなので、再調達価額に合わせた適正額で設定することが大切です。
築年数が古い建物の保険金額はどう設定すべきですか?
築古の建物でも保険金額は現在の再調達価額で設定します。以前 1,000 万円で建てた建物が人件費や建材費の高騰により現在は 1,500 万円かかるケースもあるため、建築当時の価格ではなく現在の建築コストで評価することが重要です。
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