火災保険の乗り換え手順|無保険期間を防ぐ5ステップ
この記事のポイント
火災保険の乗り換えは新保険の補償開始を確認してから旧保険を解約するのが鉄則です。5ステップの乗り換え手順、無保険期間の回避方法、解約返戻金の仕組み、比較のコツを専門家が解説します。
火災保険の満期更新で保険料が大幅に上がり、「他社に乗り換えたい」と考える方が増えています。近年は保険料率の改定が続いており、更新時の見積もりを見て驚くケースが非常に多くなりました。
火災保険の乗り換えは、新しい保険の補償開始日を確認してから旧保険を解約する手順を守れば、無保険期間を作らず安全に実行できます。この記事では、乗り換えの具体的な 5 ステップ、無保険期間の回避方法、解約返戻金の仕組み、保険会社を比較するコツを、12 社以上の保険会社を扱う専門家への取材をもとに解説します。

火災保険の乗り換えとは
火災保険の乗り換えとは、現在加入している火災保険を解約し、別の保険会社の火災保険に新たに加入することです。保険の見直しの中でも最も大きな変更であり、保険会社そのものを変えるため補償内容と保険料の両面で大きな変化が生じます。
火災保険の基本的な仕組みについては火災保険とは?基本の補償内容と必要性を解説で詳しく解説しています。
乗り換えのタイミングとしては、満期更新時と契約途中の 2 つがあります。満期更新時は手続きがシンプルで、解約返戻金の計算も不要です。一方、契約途中での乗り換えは返戻金の精算が必要ですが、保険料の節約効果が大きい場合には有効な選択肢となります。
乗り換えを検討すべき 3 つのタイミング
火災保険の乗り換えを検討するタイミングとしては、主に 3 つのケースがあります。
満期更新で保険料が高騰した場合
多くの方にとっての乗り換え理由が、満期更新時の保険料上昇です。近年は保険料率の改定が頻繁に行われており、契約条件によっては更新後の保険料が以前の 2 倍、3 倍になるケースもあります(保険料の変動幅は地域・建物構造・契約期間等の条件により異なります)。

満期更新で保険料がすごく高くなったのですが、これは仕方がないことなのでしょうか
保険料が上がる背景や値上げの推移については火災保険の値上げはなぜ?推移と今後の見通しで詳しく解説しています。
補償内容に過不足を感じた場合
家族構成の変化やリフォーム、ライフスタイルの変化によって、現在の補償内容が合わなくなることがあります。たとえば子どもが独立して夫婦 2 人になった場合は家財の補償額を見直す余地がありますし、逆に建築資材の高騰で建物の再調達価額が上がっている場合は保険金額を増やす必要があります。
保険会社のサービスや対応に不満がある場合
事故対応の遅さ、担当者の説明不足、アフターフォローの不備など、保険会社のサービス品質に不満がある場合も乗り換えの理由となります。保険料や補償内容だけでなく、万が一のときの対応力は保険会社選びの重要な判断材料です。
火災保険の乗り換え 5 ステップ
火災保険の乗り換えは、以下の 5 つのステップで進めます。正しい順番で手続きすることで、無保険期間を作らず安全に乗り換えができます。
ステップ 1: 現在の契約内容を確認する
まず、現在加入している火災保険の契約内容を正確に把握することから始めます。確認すべき項目は以下のとおりです。
- 保険会社名と証券番号
- 契約期間と満期日
- 補償内容(火災、風災、水災、盗難、破損など)
- 保険金額(建物と家財それぞれ)
- 特約の内容(個人賠償責任、類焼損害など)
- 年間保険料または一括払い保険料
保険証券が手元にない場合は、マイページや保険会社への電話で契約内容を確認できます。詳しくは火災保険のマイページ活用と控除証明書をご参照ください。
ステップ 2: 複数の保険会社から見積もりを取る
現在の契約内容を把握したら、複数の保険会社から見積もりを取得します。同じ補償内容でも保険会社によって保険料は異なるため、比較は必須です。

見積もりは何社くらい取ればよいのでしょうか
見積もりを取るときに揃えておくべき情報は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建物情報 | 構造、築年数、延床面積、所在地 |
| 補償条件 | 希望する補償範囲、保険金額、免責金額 |
| 特約 | 個人賠償責任や類焼損害などの付帯希望 |
見積もりの取り方については火災保険の見積もりを取る方法と比較のポイントで詳しく解説しています。
ステップ 3: 補償内容と保険料を比較して選ぶ
見積もりが揃ったら、保険料だけでなく補償内容を含めて総合的に比較します。保険料の安さだけで選んでしまうと、万が一のときに十分な補償が受けられないリスクがあります。
比較する際のチェック項目は以下のとおりです。
- 基本補償の範囲(水災、風災、盗難、破損など)
- 免責金額の設定
- 特約の有無と内容
- 保険期間と保険料の総額
- 事故対応の評判やサービス体制
火災保険の選び方の詳細は火災保険の選び方|失敗しない 5 ステップをご参照ください。
ステップ 4: 新しい保険に申し込む
比較の結果、乗り換え先の保険会社が決まったら、新しい保険の申し込み手続きを進めます。このとき最も重要なのが、補償開始日の設定です。
補償開始日は以下のいずれかに設定します。
- 現在の保険の満期日(満期時乗り換えの場合)
- 指定した日付(途中乗り換えの場合)
新しい保険の補償が開始される日を書面で確認し、その日付以降に旧保険を解約するのが鉄則です。この順番を間違えると無保険期間が発生してしまいます。
ステップ 5: 旧保険を解約する
新しい保険の補償開始が確認できたら、旧保険の解約手続きを行います。解約の連絡先は現在の保険会社または代理店です。
解約手続きの詳しい流れについては火災保険の解約方法|返戻金の計算と注意点で解説しています。
無保険期間を回避する方法
火災保険の乗り換えで最も注意すべきことは、無保険期間を作らないことです。無保険期間とは、旧保険の補償が終了してから新保険の補償が開始するまでの空白期間のことです。
無保険期間が危険な理由
無保険期間中に火災、台風、水害などの災害が発生した場合、損害を補償してくれる保険がありません。住宅は数千万円の資産であり、全焼や全損した場合の経済的ダメージは計り知れません。
たとえば台風や集中豪雨は予測が難しく、「数日間だけだから大丈夫」という判断は非常に危険です。実際に、乗り換え手続き中のわずかな空白期間に被災してしまうケースも起こりえます。

安全な乗り換えスケジュールの組み方
無保険期間を確実に回避するために、以下のスケジュールで進めることをおすすめします。
満期時乗り換えの場合のスケジュールは以下のとおりです。
- 満期の 2〜3 か月前: 現在の契約内容を確認し、乗り換えの検討を開始
- 満期の 1〜2 か月前: 複数社から見積もりを取り、比較検討
- 満期の 2〜3 週間前: 乗り換え先を決定し、新保険の申し込み
- 満期日: 新保険の補償開始日を満期日に合わせる
- 満期日以降: 旧保険が自動的に満了(更新しない旨を通知済みの場合)
途中乗り換えの場合は、新保険の補償開始日を決めてから、その日以降に旧保険の解約手続きを行います。
重複期間のコストは最小限
乗り換え時に新旧の保険が 1〜2 日重複しても、その分の保険料コストはごくわずかです。契約内容にもよりますが、長期契約の場合 1 日分の保険料は少額にとどまることが一般的であり、万が一の無保険リスクと比べれば気にならない水準であることがほとんどです。
安全を優先して、新保険の補償開始日を旧保険の満期日と同日か 1 日前に設定するのがおすすめです。
解約返戻金の仕組み
火災保険を途中で解約して乗り換える場合、長期契約で保険料を一括払いしていれば解約返戻金が受け取れます。ここでは返戻金の計算方法と注意点を解説します。
解約返戻金とは
解約返戻金とは、長期契約の火災保険を途中解約した際に、未経過期間に対応する保険料が返金される仕組みです。たとえば 5 年契約で 3 年経過後に解約すれば、残り 2 年分に相当する金額が戻ってきます。
ただし、返戻金は単純な日割り計算ではなく、保険会社ごとの「短期料率表」に基づいて計算されます。そのため、残りの期間に比例した金額よりも少なくなるのが一般的です。
解約返戻金の額は、保険期間に応じた所定の方法により算出された額とします。この場合において、解約返戻金の額は保険料から既経過期間に対して別表に掲げる短期料率によって算出した保険料を差し引いた残額とします。
満期時と途中解約の違い
乗り換えのタイミングによって、金銭面でのメリット・デメリットが異なります。
| 項目 | 満期時の乗り換え | 途中解約での乗り換え |
|---|---|---|
| 解約返戻金 | なし(保険期間を使い切るため) | あり(残存期間に応じて返金) |
| 手続きの手間 | シンプル | 解約と新規申し込みが同時に必要 |
| 経済的損失 | なし | 短期料率により一部損失あり |

途中で乗り換えると損をするのですか
月払い・年払いの場合
月払いや年払いで契約している場合は、解約返戻金がほとんど発生しません。保険料を分割で支払っているため、未経過分の保険料がない、もしくはごくわずかだからです。この場合は解約返戻金を気にせず、より良い条件の保険があれば乗り換えを進めやすいメリットがあります。
返戻金の受け取りまでの流れ
解約返戻金は、解約手続き完了後に指定の銀行口座に振り込まれます。一般的な流れは以下のとおりです。
- 保険会社または代理店に解約の連絡をする
- 解約書類に記入して返送する
- 手続き完了後 2〜3 週間で返戻金が振り込まれる
返戻金の正確な金額は解約手続き前に保険会社に問い合わせれば教えてもらえます。乗り換えの判断材料として、事前に確認しておくことをおすすめします。
乗り換え時の比較ポイント
火災保険の乗り換えで失敗しないためには、正しいポイントで比較することが重要です。ここでは、比較の際に押さえるべき 5 つのポイントを解説します。
ポイント 1: 補償範囲を揃えて比較する
保険料だけを比較しても意味がありません。必ず同じ補償条件で見積もりを取り、保険料を比較してください。補償範囲が異なる見積もりを並べても、正確な比較にはなりません。
具体的には以下の補償をそろえて比較します。
- 火災、落雷、破裂・爆発
- 風災、雹災、雪災
- 水災
- 盗難
- 水濡れ
- 外部からの物体の衝突
- 破損、汚損
ポイント 2: 免責金額の設定を確認する
免責金額(自己負担額)の設定によっても保険料は変わります。免責金額を高く設定すると保険料は下がりますが、事故のときの自己負担が増えます。
一般的な免責金額の設定は 0 円、1 万円、3 万円、5 万円、10 万円などです。少額の損害に対して保険を使う予定がなければ、免責金額を設定することで保険料を抑えられます。
ポイント 3: 特約の必要性を見極める
火災保険にはさまざまな特約を付帯できます。乗り換え時に特約の要否を見直すことで、不要なコストを削減できます。
よく付帯される特約としては以下のものがあります。
- 個人賠償責任特約
- 類焼損害補償特約
- 臨時費用補償特約
- 建物電気的・機械的事故特約
特約の見直しについては火災保険の見直しガイドも参考にしてください。
ポイント 4: 契約期間で保険料総額を比較する
火災保険の契約期間は現在最長 5 年です。長期契約にすると年あたりの保険料が割安になるため、今後数年間は契約を続ける予定であれば長期契約がおすすめです。
比較する際は、1 年あたりの保険料に換算して比較するとわかりやすくなります。たとえば A 社が 5 年で 15 万円、B 社が 5 年で 14 万円であれば、年あたりの差は 2,000 円です(金額は比較のための例示であり、実際の保険料は条件により異なります)。
ポイント 5: 事故対応力とサービス体制
保険料や補償内容だけでなく、事故が起きたときの対応力も重要な比較ポイントです。
乗り換えの注意点
火災保険の乗り換えを成功させるために、見落としがちな注意点を確認しておきましょう。
地震保険も同時に手続きする
地震保険は火災保険に付帯して加入する保険であり、火災保険を乗り換えると地震保険も同時に切り替わります。旧保険に地震保険が付いていた場合は、新保険でも地震保険を忘れずに付帯してください。
なお、地震保険は政府と保険会社が共同で運営しているため、どの保険会社で加入しても保険料と補償内容は同じです。
住宅ローンの質権設定を確認する
住宅ローンの返済中に火災保険を乗り換える場合、質権設定の有無を確認してください。質権設定とは、金融機関が住宅ローンの担保として火災保険の保険金請求権を確保する仕組みです。
質権設定の詳細は火災保険の質権設定をご参照ください。
新しい保険の告知事項に正確に回答する
新しい火災保険に申し込む際は、告知事項に正確に回答する必要があります。建物の築年数、構造、過去の保険金請求歴などを偽ると、いざというときに保険金が支払われない可能性があります。
過去の保険金請求歴がある場合、新しい保険会社の引き受け条件が厳しくなることがありますが、正直に申告してください。虚偽の告知は契約解除の理由となります。
保険料の安さだけで判断しない
乗り換えの目的が保険料の節約であっても、補償内容を大幅に削ることはおすすめしません。
補償内容の判断に迷ったときは火災保険の選び方を参考に、必要な補償を見極めてください。
乗り換え前に現在の保険会社にも相談する
他社に乗り換える前に、現在の保険会社や代理店に保険料を安くできないか相談してみるのも一つの方法です。補償内容の見直しや割引制度の適用で、乗り換えずに保険料を下げられる場合もあります。
それでも納得できない場合に、他社への乗り換えを進めるという流れが合理的です。
乗り換えで保険料はどのくらい変わるか
火災保険の乗り換えでどの程度の保険料削減が見込めるかは、物件の条件や現在の契約内容によって異なります。ただし、複数社を比較することで年間数千円から数万円の差が出ることは珍しくありません。
特に以下のケースでは、乗り換えによる節約効果が大きくなる傾向があります。
- 長期間見直しをしておらず、古い料率で契約していた場合
- 銀行や不動産会社経由で 1 社のみの見積もりで加入した場合
- 不要な特約が多数付帯されていた場合
- 免責金額が 0 円に設定されていた場合
逆に、すでに複数社を比較して保険料の低い保険に加入している場合や、築古物件で引き受け条件が厳しい場合は、乗り換えても保険料が大きく変わらないこともあります。
乗り換え手続きに必要な書類
火災保険の乗り換えに必要な書類は、新しい保険への申し込みと旧保険の解約の両方に関わります。事前に準備しておくとスムーズに手続きが進みます。
新保険の申し込みに必要な書類は以下のとおりです。
- 建物の登記簿謄本(登記事項証明書)
- 建物の図面や平面図(延床面積の確認用)
- 現在の火災保険証券のコピー(補償内容の参照用)
- 本人確認書類
旧保険の解約に必要な書類は以下のとおりです。
- 保険証券
- 解約届出書(保険会社から送付される)
- 振込先の口座情報(解約返戻金の受け取り用)
住宅ローンで質権設定がある場合は、金融機関の承認書類も必要になります。余裕を持って準備を進めてください。
この記事のまとめ
- 火災保険の乗り換えは満期更新時が最もスムーズで、途中解約でも返戻金を受け取って乗り換え可能
- 乗り換えの 5 ステップは「現状確認→見積もり取得→比較→新保険申込→旧保険解約」の順番が鉄則
- 無保険期間を作らないために、新保険の補償開始を確認してから旧保険を解約する
- 解約返戻金は短期料率で計算されるため、日割り計算よりも少なくなる点に注意
- 保険料だけでなく補償内容、事故対応力、特約の要否を含めて 3〜4 社を比較する
- 地震保険の付帯や質権設定の確認も忘れずに行う
よくある質問
火災保険を途中で他社に乗り換えることはできますか?
はい、火災保険は契約期間の途中でも他社に乗り換えることができます。長期契約で一括払いをしている場合は、残りの保険期間に応じた解約返戻金も受け取れます。ただし、新しい保険の補償が始まってから旧保険を解約し、無保険期間を作らないよう注意してください。
火災保険の乗り換えで無保険期間ができたらどうなりますか?
無保険期間中に火災や自然災害が発生すると、一切の補償が受けられません。たった 1 日でもリスクがあるため、乗り換え時は新旧の保険を 1 日重複させるか、同日付で切り替えるようにしてください。
火災保険の乗り換えは満期時と途中のどちらがよいですか?
満期時の乗り換えが最もスムーズです。途中解約でも乗り換えは可能ですが、解約返戻金は日割り計算にならないため損をする場合があります。急ぎの理由がなければ満期まで待って乗り換えることをおすすめします。
火災保険の乗り換えで何社くらい比較するのがよいですか?
最低でも 3〜4 社は比較することをおすすめします。同じ補償内容でも保険会社によって数万円の差が出ることがあります。銀行や不動産会社経由では比較できる保険会社が限られるため、複数社を扱う保険代理店に相談するのが効率的です。
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