火災保険の値上げ推移|参考純率の改定と今後
この記事のポイント
火災保険料は2019年以降4回の参考純率改定で累計40%以上引き上げられました。過去の改定推移、値上げの原因、契約期間の短縮経緯、2024年改定の内容、今後の見通しを専門家が解説します。
火災保険の保険料が年々上がっていることはご存じでも、「いつから、どのくらい上がってきたのか」を把握している方は少ないのではないでしょうか。実は2019年以降、わずか5年の間に参考純率の改定が4回も実施されており、火災保険を取り巻く状況は大きく変化しています。
結論として、火災保険料は2019年から2024年にかけて4回の参考純率改定が行われ、全国平均で累計約40%以上の引き上げとなっています。この記事では、火災保険の値上げの歴史、参考純率の改定推移、値上げが続く原因、契約期間の短縮経緯、最新の改定内容、そして今後の見通しまでを専門家への取材をもとに時系列で解説します。

火災保険の値上げの歴史
火災保険の保険料は、損害保険料率算出機構が算出する「参考純率」をもとに各保険会社が決定しています。この参考純率が引き上げられると、多くの保険会社が保険料の値上げを行います。
火災保険とはでも解説しているとおり、火災保険は火災だけでなく風災や水災など幅広い自然災害を補償する保険です。自然災害による保険金の支払額が増えると、保険会社の収支が悪化し、保険料の見直しが必要になります。
参考純率とは何か
参考純率とは、損害保険料率算出機構が過去の保険金支払い実績や将来の予測をもとに算出する「保険金の支払いに充てるための保険料」の基準です。保険会社が受け取る保険料のうち、事故や災害時の保険金支払いに回る部分を指します。
各保険会社は参考純率をそのまま使う義務はなく、自社のデータや経営方針に基づいて独自の保険料を設定できます。しかし実際には多くの保険会社が参考純率を参考にしているため、参考純率の改定は業界全体の保険料に影響を与えます。

参考純率が上がると、すべての保険会社が同じだけ値上げするのですか?
参考純率の改定推移
ここからは、2019年以降の参考純率の改定を時系列で見ていきます。わずか5年の間に4回もの改定が行われており、それぞれの改定には異なる背景があります。
| 改定時期 | 全国平均の改定率 | 主な背景 |
|---|---|---|
| 2019年10月 | 約4.9%引き上げ | 2018年の台風21号・西日本豪雨 |
| 2021年1月 | 約6.9%引き上げ | 2019年の台風15号・19号 |
| 2022年10月 | 約10.9%引き上げ | 自然災害の長期的な増加傾向 |
| 2024年10月 | 約13.0%引き上げ | 水災リスクの再評価・建物老朽化 |
(出典:損害保険料率算出機構の火災保険参考純率改定に基づく。各保険会社の実際の保険料改定率は異なります)
改定のたびに引き上げ幅が大きくなっている点に注目してください。2019年の約4.9%から2024年の約13.0%へと、改定1回あたりの上昇率は拡大傾向にあります。
2019年10月の改定
2019年10月の改定では、参考純率が全国平均で約4.9%引き上げられました。この改定の直接的な引き金となったのは、2018年に発生した台風21号と西日本豪雨です。
2018年の台風21号は関西地方を中心に甚大な被害をもたらし、損害保険業界全体で1兆円を超える保険金支払いが発生しました。西日本豪雨でも広範囲にわたる水害が発生し、保険金の支払い額は過去の想定を大幅に上回りました。
2018年度の自然災害による保険金支払額は、火災保険全体で約1兆5,695億円に達し、過去最高を記録しました。
2021年1月の改定
2021年1月には、参考純率が全国平均で約6.9%引き上げられました。前回の改定からわずか1年3カ月での再改定です。
この改定の背景にあったのは、2019年に相次いだ台風15号(房総半島台風)と台風19号(東日本台風)です。台風15号では千葉県を中心に屋根の損壊被害が広がり、台風19号では関東から東北にかけて大規模な河川氾濫が発生しました。
2019年度の自然災害による保険金支払額も1兆円規模となり、2年連続で巨額の保険金支払いが続いたことで、より大きな幅での参考純率引き上げが実施されました。
2022年10月の改定
2022年10月の改定は、参考純率が全国平均で約10.9%と二桁の引き上げとなった大きな転換点です。さらにこの改定では、火災保険の最長契約期間が10年から5年に短縮されるという制度変更も同時に実施されました。
単年の大規模災害だけでなく、自然災害全体の増加傾向を踏まえた「構造的な見直し」が行われた改定といえます。毎年のように台風や豪雨による被害が発生し、保険金の支払いが恒常的に高い水準で推移していることが、大幅な引き上げの背景にあります。
2024年10月の改定
直近の2024年10月の改定では、参考純率が全国平均で約13.0%引き上げられました。4回の改定で最大の引き上げ幅です。
この改定の大きな特徴は、水災料率に5段階の区分が導入されたことです。従来は全国一律だった水災の保険料率が、地域ごとのリスクに応じて5つの区分に分けられました。河川沿いや低地など水災リスクの高いエリアでは保険料が大幅に上がる一方、高台などリスクの低いエリアでは引き下げとなるケースもあります。

水災料率の5段階区分はどのように決まるのですか?
水災補償の必要性については火災保険の水災補償はいらない?で詳しく解説しています。
値上げが続く主な原因
参考純率の改定が繰り返される背景には、複数の構造的な要因があります。一時的な要因ではなく、長期的に保険料を押し上げる力が働いています。
自然災害の増加と大規模化
最も大きな要因は、自然災害の頻度と規模の増大です。地球温暖化の影響により、台風の勢力が強まり、集中豪雨の頻度が増加しています。
かつては「数十年に一度」とされていた規模の自然災害が、ここ数年は毎年のように発生しています。2018年以降に限っても、台風21号、西日本豪雨、台風15号、台風19号、令和2年7月豪雨、令和3年8月豪雨など、大規模な自然災害が相次いでいます。
建物の老朽化による支払い増加
日本の住宅ストックの老朽化も、保険料上昇の要因の一つです。築年数が古い建物ほど、同じ規模の災害でも受ける被害が大きくなり、修繕費用も高額になります。
築年数と保険料の関係については火災保険の値上げはなぜ?で詳しく解説しています。
修繕費用と資材価格の上昇
建物の修繕に使う資材価格や人件費の上昇も、保険金支払い額を押し上げています。木材、鋼材、コンクリートなどの建築資材は、世界的な需要増加や円安の影響を受けて価格が上昇しました。
同じ規模の損害を受けた場合でも、修繕にかかる費用が以前より高くなっているため、保険会社の支払い額も増加しています。この傾向は今後も続くと見られており、保険料率にも反映される可能性があります。
水災リスクの再評価
2024年の改定で導入された水災料率の5段階区分は、従来の全国一律料率では水災リスクを適切に反映できないという認識に基づいています。
河川沿いの低地に住んでいる方と高台に住んでいる方では、水災のリスクが大きく異なります。全国一律の料率では、リスクの低い地域の契約者がリスクの高い地域の保険金を実質的に負担している状態でした。地域ごとのリスクに応じた料率設定は、公平性の観点からも必要な変更です。
国土交通省のハザードマップポータルサイトでご自宅の水災リスクを確認しておくことをおすすめします。

契約期間の短縮化の経緯
火災保険の値上げ推移を理解する上で、契約期間の短縮化は非常に重要なテーマです。契約期間が短くなるほど、保険料率の改定が保険料に反映されるタイミングが早くなるためです。
36年契約の時代
かつて火災保険は、住宅ローンの返済期間に合わせて最長36年の長期契約が可能でした。住宅ローンを組む際に36年一括で火災保険に加入すれば、ローン返済が終わるまで保険料を気にする必要がありませんでした。
この時代に加入した方の契約が満期を迎えると、現在の保険料率が適用されるため、保険料が大幅に上がることになります。
10年契約への短縮(2015年10月)
2015年10月、火災保険の最長契約期間が36年から10年に短縮されました。この変更の背景にあったのは、長期のリスク予測が困難になったことです。
自然災害の発生パターンが変化し、将来の損害額を長期にわたって正確に予測することが難しくなりました。36年という長い期間では、途中で大幅な料率改定が行われても契約中の保険料に反映できないため、保険会社にとって大きな経営リスクとなっていたのです。
5年契約への短縮(2022年10月)
2022年10月、最長契約期間がさらに10年から5年に短縮されました。2019年以降の大規模災害の連続発生を受け、10年でもリスク予測が難しいという判断が背景にあります。

契約期間が短くなると、契約者にとってはどのようなデメリットがありますか?
契約期間の選び方については火災保険の契約期間はどれがお得?で詳しく解説しています。
長期契約からの切り替え時の影響
特に大きな影響を受けるのが、過去に長期契約を結んだ方が満期を迎えるケースです。20年前に36年契約で加入した方が満期を迎えて新たに5年契約で加入する場合、保険料が2倍から3倍程度になるケースもあります。
その理由は、次のとおりです。
- 20年間で参考純率が大幅に引き上げられている
- 建物の築年数が20年分加算され、保険料率が上がる
- 最長契約期間が5年になり、長期割引の効果が小さくなっている
- 水災料率の地域別細分化で保険料が変動している
2024年から2025年の最新改定内容
2024年10月に実施された直近の改定は、保険料率の引き上げだけでなく、料率体系そのものに大きな変更が加えられた点が特徴です。
参考純率の引き上げ幅
2024年10月の改定で、参考純率は全国平均で約13.0%引き上げられました。ただし地域や建物の構造によって改定率は大きく異なります。
- 木造住宅: 一部地域では20%を超える引き上げ
- 鉄筋コンクリート造: 比較的穏やかな引き上げ
- 水災リスクの高いエリア: 地域別料率の導入で大幅な引き上げ
- 水災リスクの低いエリア: 水災料率は引き下げの場合もあり
水災料率の5段階区分の詳細
2024年10月から導入された水災料率の5段階区分は、住所ごとの浸水リスクに基づいて設定されています。
| 区分 | リスクの水準 | 保険料への影響 |
|---|---|---|
| 1等地 | 最もリスクが低い | 引き下げの可能性あり |
| 2等地 | リスクが低い | やや引き下げの可能性あり |
| 3等地 | 標準的なリスク | 従来と同程度 |
| 4等地 | リスクが高い | 引き上げの可能性あり |
| 5等地 | 最もリスクが高い | 大幅な引き上げの可能性あり |
(出典:損害保険料率算出機構の水災料率改定に基づく。実際の保険料は保険会社・プランにより異なります)
この区分は、国土交通省のハザードマップ情報や過去の浸水実績をもとに設定されています。ご自宅の水災等地は、加入中の保険会社や代理店に問い合わせることで確認できます。
今後の追加改定の可能性
2025年以降も、保険各社が独自のタイミングで保険料改定を実施する可能性があります。損害保険料率算出機構の参考純率改定とは別に、各社が自社の支払い実績をもとに保険料を調整するケースもあるためです。
火災保険の10年相場については火災保険の10年相場もあわせてご確認ください。
値上げの累計でどのくらい上がったのか
4回の参考純率改定が保険料にどの程度影響しているのか、具体的な数字で見てみましょう。
累計の引き上げ率
2019年から2024年までの4回の改定で、参考純率は全国平均で累計約40%以上の引き上げとなっています。単純に各改定の引き上げ率を掛け合わせると、次のようになります。
- 2019年10月: 約4.9%引き上げ
- 2021年1月: 約6.9%引き上げ
- 2022年10月: 約10.9%引き上げ
- 2024年10月: 約13.0%引き上げ
これらを複利で計算すると、2019年以前と比べて保険料が約40%以上増加している計算になります。ただしこれは全国平均であり、地域や建物の構造によって実際の影響は異なります。
具体的な影響の例
参考純率の改定が保険料にどう反映されるかは保険会社によって異なりますが、一般的な傾向として次のようなケースが見られます。
- 5年前に年間3万円だった保険料が、現在は年間4万円台になっている
- 10年前に36年一括で60万円だった保険料が、5年契約で30万円以上の見積もりが出る
- 水災リスクの高いエリアでは、さらに大きな値上げ幅になっている
(上記は一般的な傾向を示す概算値です。実際の保険料は物件条件や保険会社により異なります)
火災保険の選び方については火災保険の選び方ガイドで詳しく解説しています。
今後の見通し
火災保険の保険料は今後どうなるのか、現時点でわかっている情報をもとに見通しを整理します。
さらなる値上げの可能性
残念ながら、保険料の値上げが今後も続く可能性は高いと考えられます。その主な理由は次のとおりです。
- 自然災害の発生頻度と規模は増加傾向にある
- 地球温暖化により台風の勢力が強まる予測がある
- 建物の老朽化が今後も進む
- 建築資材や人件費の上昇が続く見込み
- 水災料率の地域別細分化がさらに進む可能性がある
地域別料率の拡大
2024年に導入された水災料率の5段階区分は、今後さらに細分化される可能性があります。現在は5段階ですが、将来的にはより細かい区分での料率設定が検討されるかもしれません。
また水災だけでなく、風災や雪災についても地域別の料率設定が導入される可能性があります。台風の被害が多い地域と少ない地域、積雪量の多い地域と少ない地域で保険料に差をつけるという考え方です。
値上げに対する具体的な対策
今後の値上げに備えて、いまできることを整理します。
- 更新の1〜2カ月前に複数社で見積もりを取る
- ハザードマップを確認し、水災補償の要否を判断する
- 免責金額の設定を検討する
- 5年契約の一括払いで保険料を固定する
- 不要な補償を外して保険料を最適化する
- 地震保険とのバランスも含めて総合的に検討する

値上げが続く中で、長期契約と短期契約のどちらがよいのですか?
値上げ推移を踏まえた保険の見直し方
ここまで見てきた値上げの推移と今後の見通しを踏まえて、火災保険をどのように見直せばよいか、実践的なポイントをまとめます。
現在の補償内容を棚卸しする
まずは加入中の火災保険の補償内容を確認しましょう。保険証券や保険会社のマイページで以下の項目をチェックしてください。
- 補償の範囲(火災、風災、水災、盗難、破損・汚損など)
- 保険金額(建物、家財)
- 免責金額の設定
- 契約期間と満期日
- 特約の内容
複数社で比較する
火災保険料は保険会社によって差があります。同じ補償内容でも、保険会社によって年間で数千円から数万円の差が出ることがあります。
更新の際には最低でも2〜3社、できれば4〜5社の見積もりを取って比較することをおすすめします。保険代理店に相談すれば、複数社の見積もりを一括で取得できます。
火災保険の比較については火災保険の選び方ガイドで詳しく解説しています。
更新時期を逃さない
火災保険の更新時期が近づいたら、満期の1〜2カ月前には見積もりを取り始めましょう。満期ギリギリになると十分な比較検討ができず、結果的に他社と比較しないまま契約してしまうことがあります。
この記事のまとめ
- 火災保険の参考純率は2019年から2024年に4回改定され、全国平均で累計約40%以上引き上げられた
- 値上げの主な原因は自然災害の増加、建物の老朽化、修繕費用の上昇
- 最長契約期間は36年から10年、さらに5年へと段階的に短縮された
- 2024年10月の改定で水災料率の5段階区分が導入され、地域差が拡大した
- 今後も値上げが続く見通しのため、早めの見直しと複数社比較が重要
- 5年契約で保険料を固定しつつ、補償内容の最適化で負担を抑えられる
よくある質問
火災保険の参考純率はどのくらい上がっていますか?
2019年から2024年までに4回の改定が行われ、全国平均で累計約40%以上の引き上げとなっています。特に2024年10月の改定では全国平均で約13.0%の引き上げが実施されました。
火災保険の値上げはいつから続いていますか?
近年の連続的な値上げは2019年10月の改定から始まっています。2019年、2021年、2022年、2024年と短期間に4回の参考純率引き上げが行われました。
火災保険の契約期間が短縮された理由は何ですか?
自然災害の増加により保険会社が長期のリスク予測を行いにくくなったためです。最長契約期間は36年から10年、さらに5年へと段階的に短縮されました。
今後も火災保険料は上がり続けますか?
自然災害の増加傾向が続く限り、さらなる改定の可能性があります。水災料率の地域細分化が進み、リスクの高いエリアでは追加の値上げが見込まれます。
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