テレワーク継続企業が意識すべきサイバーリスク管理
この記事のポイント
テレワークを続ける企業にとってサイバーリスク管理は経営課題です。セキュリティ対策と保険の両立、付帯サービスの活用、インシデント対応体制の整備など、専門家の知見をもとに要点を解説します
テレワークを継続している企業にとって、サイバーリスク管理は避けて通れない経営課題です。
セキュリティ対策とサイバー保険の両立、付帯サービスの戦略的活用、そしてインシデント発生時の対応体制の整備が、テレワーク時代のリスク管理の3本柱です
この記事では、サイバー保険の専門家への取材をもとに、テレワークを続ける企業が意識すべきサイバーリスク管理の要点を解説します。

テレワーク環境ではリスクが「構造的に」高まっている
テレワークによるサイバーリスクの増大は、一時的な問題ではなく構造的な変化です。オフィスに出勤して社内ネットワーク内で業務を行う形態から、自宅や外部のネットワークから社内システムにアクセスする形態に変わったことで、セキュリティの前提条件そのものが変わりました。
テレワークを一時的な措置ではなく恒常的な働き方として続ける企業にとっては、この構造的なリスク増大を前提としたリスク管理体制の構築が不可欠です。テレワーク普及に伴うサイバー保険の相談内容の変化については、テレワーク普及でサイバー保険の相談はどう変わったで詳しく紹介しています。
テレワーク環境で特に留意すべきリスクは以下の通りです。
- 自宅Wi-Fiのセキュリティ水準が企業ネットワークより低い
- 従業員の端末が個別管理になり一元的なセキュリティ監視が難しい
- フィッシングメール等の人的ミスが起きやすい環境
- VPNやリモートアクセスツールの脆弱性を突いた攻撃の増加
セキュリティ対策と保険を両立させる考え方
テレワーク環境のサイバーリスクに対処するためには、セキュリティ対策と保険の両方が必要です。どちらか一方だけでは不十分です。
この「セキュリティ対策が第一、保険は万が一のため」という優先順位を明確にしておくことが大切です。
セキュリティ対策と保険の役割を整理すると次のようになります。
| 項目 | セキュリティ対策 | サイバー保険 |
|---|---|---|
| 目的 | 攻撃の予防と被害の最小化 | 被害発生時の経済的損失の補填 |
| 効果 | リスク発生の確率を下げる | リスク発生時の影響を軽減する |
| 限界 | 完全な防御は困難 | 予防にはならない |

セキュリティ対策をしっかりやっていれば、保険は不要ではないですか?
セキュリティ対策をしっかり行っていた企業でもサイバー攻撃の被害に遭った事例は実際にあります。IT部門を設置し、セキュリティソフトも導入していた中小企業が、ランサムウェアに感染し、事故対応費用だけで1,200万円がかかりました。「対策していれば必ず防げる」という前提は成り立ちません。保険で補償される調査・復旧費用の具体的な内訳は、サイバー保険の補償範囲は?調査・復旧費用を解説をご覧ください。
保険の付帯サービスを「攻め」のリスク管理に活用する
サイバー保険は、事故が起きた後に保険金を受け取るためだけのものではありません。多くの保険会社が提供する付帯サービスを活用することで、平常時からリスクを可視化し、先手を打つことが可能になります。
サイバー保険の付帯サービスとして一般的に提供されているものは以下の通りです。
- サイバーリスクモニタリングサービス(自社のリスク状況の定期診断)
- インシデント発生時の初動対応サポート(専門家への即時相談)
- フォレンジック調査業者の紹介(事故原因の特定)
- 法務対応のサポート(情報漏洩時の通知義務対応等)
- 復旧支援(システム復旧に向けた専門家のアドバイス)

付帯サービスって、追加料金がかかるんですか?
多くのサイバー保険では、付帯サービスは保険料に含まれています。つまり、保険に加入しているだけで、平常時のリスクモニタリングや事故発生時のサポート体制が使える状態になります。これらのサービスを活用しない手はありません。
特に中小企業にとっては、自社でセキュリティの専門チームを持つことは現実的ではありません。保険の付帯サービスを「外注のセキュリティチーム」として活用するという発想で、リスク管理のレベルを引き上げることができます。インシデント対応サービスの具体的な内容については、サイバー保険のインシデント対応サービスを徹底解説で詳しく紹介しています。
インシデント対応体制の整備が保険金の着金を左右する
サイバー事故が発生した際に、迅速に対応できる体制が整っているかどうかは、被害の拡大を防ぐだけでなく、保険金の着金スピードにも直結します。
この差は非常に大きいです。事故対応費用が数百万円から数千万円に上る中で、保険金の着金が1年遅れるということは、その間の資金繰りに深刻な影響を及ぼします。
インシデント対応体制として最低限整備すべき項目は以下の通りです。
- インシデント発生時の社内報告フローの明確化
- 保険会社への連絡先と連絡手順の周知
- 初動対応で「やること」「やってはいけないこと」のリスト化
- フォレンジック調査に必要な情報の日常的な記録
- 全従業員がマニュアルの存在と内容を認識している状態の維持
BCP(事業継続計画)にサイバー攻撃を組み込む
事業継続計画(BCP)は、従来は地震や台風といった自然災害を想定して策定されることが多かったですが、現在ではサイバー攻撃もBCPに組み込むべき重要なリスクの一つです。
テレワーク環境では、システム停止が即座に業務停止に直結します。オフィスであれば電話やFAXで最低限の業務を継続できる場合もありますが、テレワーク環境ではITシステムが生命線です。
BCPにサイバー攻撃を組み込む際のポイントは以下の通りです。
- システム停止時の代替業務手順を定めておく
- バックアップからの復旧手順を具体的に文書化する
- 復旧の優先順位(どのシステムから復旧させるか)を決めておく
- 取引先への連絡手順と連絡先を最新の状態に保つ
- 定期的にBCPの訓練(机上演習含む)を実施する
テレワーク環境のリスク管理チェックリスト
ここまで解説した内容をもとに、テレワーク継続企業が定期的に確認すべきリスク管理のチェック項目を整理します。
セキュリティ対策の確認項目として、以下を定期的にチェックしましょう。
- 全従業員の端末でOSとソフトウェアが最新の状態に保たれているか
- 社内システムへのログインに多要素認証が導入されているか
- VPNが全社的に展開され、社外からのアクセスはVPN経由になっているか
- クラウドバックアップが定期的に実施されているか
- 直近3ヶ月以内に従業員向けのセキュリティ教育を実施したか
保険と体制面の確認項目も重要です。
- サイバー保険に加入しているか
- 保険の補償範囲と保険金額が自社のリスクに見合っているか
- 付帯サービスのリスクモニタリングを活用しているか
- インシデント対応マニュアルが整備され全員に周知されているか
- BCPにサイバー攻撃のシナリオが含まれているか
経営者が最も優先すべきアクション
テレワーク環境のリスク管理として、多くの施策を紹介してきましたが、全てを一度に実施するのは難しいかもしれません。経営者として最も優先すべきアクションは何でしょうか。
従業員教育と並行して、サイバー保険への加入を検討すべきです。年間数万円から加入できるプランもあり、パソコン1台の調査費用100万円と比較すれば、保険料は十分にリーズナブルです。コストを抑えた具体的な対策の進め方は、今日からできるテレワークのセキュリティ対策5選で優先順位とともに解説しています。限られた予算で何から取り組むべきかは、限られた予算で優先すべきセキュリティ対策4選も参考になります。
セキュリティ対策を軽視しないこと。これがサイバー保険の専門家が伝えたいメッセージです。「うちは小さい企業だから大丈夫」「狙われるわけがない」という認識は、見直す必要があります。無差別攻撃が増加傾向にある現在、企業規模にかかわらずリスクへの備えが求められています。セキュリティ対策と保険の両輪で、テレワーク時代のリスクに備えましょう。
この記事のまとめ
- テレワーク環境ではセキュリティリスクが構造的に高まっており、恒常的なリスク管理体制が必要
- セキュリティ対策と保険の両立が基本で、保険の付帯サービスを平常時のリスク管理に活用できる
- インシデント対応マニュアルの整備が保険金の着金スピードを大きく左右する
- 従業員教育の継続と、年間数万円から加入できるサイバー保険の検討が最優先のアクション
テレワーク企業にサイバー保険は必須ですか?
パソコンを使って事業を行う企業にとって、サイバー保険は重要な備えと言えます。テレワーク環境ではリスクがさらに高まるため、早めの加入検討をおすすめします。
サイバー保険の付帯サービスとは何ですか?
保険本来の補償に加えて提供されるサービスで、平常時のサイバーリスクモニタリングや事故発生時のサポート体制などがあります。保険料に含まれているケースが多いです。
インシデント対応マニュアルは必要ですか?
必要です。マニュアルの有無が保険金の着金スピードに大きく影響します。事前準備ができていれば1ヶ月以内に着金できる可能性がありますが、準備がないと1年かかることもあります。
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