復旧が早い企業と遅い企業の違いとは?
この記事のポイント
サイバー攻撃からの復旧速度は企業によって大きく異なります。バックアップの有無、対応マニュアルの整備、保険の付帯サービス活用が復旧を左右します。復旧が早い企業の共通点を専門家の視点で解説します
サイバー攻撃からの復旧速度は、企業の事前準備によって数日から1年以上まで大きな差が生まれます。復旧が早い企業にはバックアップ体制、対応マニュアル、保険の付帯サービス活用という3つの共通点があります。復旧を左右する要因と、今日から始められる対策を解説します。

復旧スピードに差が出る理由
同じ規模の企業がサイバー攻撃を受けても、復旧にかかる期間は大きく異なります。ある企業は1ヶ月以内に通常業務に復帰しているのに対し、別の企業は1年以上を要するケースもあります。
この差は主に事前準備の有無によって生まれます。サイバー攻撃はいつ発生するかわかりません。攻撃を受けてから対応策を考え始める企業と、あらかじめ対応手順を決めて定期的に訓練している企業では、初動対応のスピードがまったく違います。復旧期間の具体的なタイムラインについてはサイバー攻撃からの復旧期間は?実態を解説で詳しく紹介しています。
バックアップの有無が復旧を最も左右する
復旧スピードに最も大きく影響するのは、バックアップの有無です。
サイバー攻撃を受けてネットワーク上のデータにアクセスできなくなった場合、バックアップがあれば別の場所からデータを復元し、比較的早く業務を再開できます。さらに、バックアップと攻撃を受けたシステムを比較することで、被害の範囲を特定しやすくなるという利点もあります。
一方、バックアップがない場合はデータをゼロから復元することになり、復旧期間が大幅に長期化します。ランサムウェア被害では表面化しにくい隠れたコストも発生するため、ランサムウェアの隠れたコストとは?もあわせて確認しておくことをおすすめします。
バックアップの保存場所も重要なポイントです。攻撃を受けたネットワークと同じ場所にバックアップを保存していた場合、バックアップごと被害に遭う可能性があります。

バックアップはどこに保存するのがよいですか?
クラウド上にバックアップを保存するのが推奨されています。しっかり対策を取っている企業はクラウドにバックアップを上げており、物理的に別の場所に保存することで、万が一の際にも確実にデータを復元できる体制を整えています。
インシデント対応マニュアルの重要性
復旧が早い企業の2つ目の共通点は、インシデント対応マニュアルを事前に作成し、社内で共有していることです。
サイバー攻撃を受けた直後は混乱が起きます。どこに連絡すればよいのか、何を優先すべきか、誰が判断するのかが決まっていないと、初動対応が遅れ、被害が拡大します。
マニュアルに含めるべき項目は以下の通りです。
- サイバー攻撃を発見した際の初動手順
- 連絡先リスト(保険会社、専門業者、経営層)
- システム切り離しの判断基準と手順
- 社外への通知のタイミングと方法
IT部門の有無と対応力
社内にIT部門があるかどうかも、復旧スピードに影響します。IT部門がある企業は、攻撃を受けた際の初期判断が早く、システムの切り離しや応急対応を迅速に行うことができます。
実際にランサムウェア被害に遭った中小企業の事例では、社内にIT部門があり、セキュリティ対策もしっかり行っていました。それでもランサムウェアに感染しましたが、IT部門の存在が初動対応のスピードに寄与しています。
一方、IT部門がない中小企業がサイバー攻撃を受けた場合、何が起きているのか、どう対応すべきかの判断に時間がかかります。この初動の遅れが復旧期間全体を長引かせる原因になります。

IT部門がない企業は、どうやって迅速に対応すればよいですか?
IT部門がない企業にとって重要なのが、サイバー保険の付帯サービスの活用です。保険に加入していれば、事故発生直後から専門家のサポートを受けることができるため、社内にIT部門がなくても適切な対応が可能です。
保険の付帯サービスで復旧を加速する
サイバー保険には、保険金の支払いだけでなく、事故発生時の対応をサポートする付帯サービスがあります。このサービスを活用できるかどうかが、復旧スピードの大きな分かれ目になります。
付帯サービスの内容は以下の通りです。
- 事故発生直後の初動対応アドバイス
- フォレンジック調査の専門業者の紹介
- 法務対応のための弁護士紹介
- 復旧に向けたコンサルティング
実際の事故対応事例では、被害を受けた企業がどこに何を連絡すれば原因調査ができるのかわからない状態でしたが、サイバー保険の付帯サービスを通じて専門業者を紹介してもらい、スムーズに対応を進めることができました。付帯サービスの具体的な内容はサイバー保険のインシデント対応サービスを徹底解説で詳しく紹介しています。
平常時のリスクモニタリングも差を生む
復旧が早い企業は、普段からリスクを把握する取り組みを行っています。サイバー保険の付帯サービスには、平常時に利用できるサイバーリスクモニタリングサービスも含まれています。
このサービスでは、自社のホームページのセキュリティが十分かどうか、社内ネットワークにリスクがないかといった点をチェックできます。攻撃を受ける前にリスクを把握し、対策を講じておくことで、万が一攻撃を受けた際の被害を最小限に抑えることができます。
復旧が早い企業と遅い企業の比較
復旧が早い企業と遅い企業の違いを整理します。
| 項目 | 復旧が早い企業 | 復旧が遅い企業 |
|---|---|---|
| バックアップ | クラウドに定期保存 | バックアップなし |
| マニュアル | 全社員が認識 | 未作成 |
| 保険 | 付帯サービスを活用 | 未加入 |
復旧が早い企業に共通しているのは、攻撃を受ける前から準備を整えているという点です。バックアップ、マニュアル、保険の3つはそれぞれ独立した対策ではなく、組み合わせて初めて効果を発揮します。
バックアップがあってもマニュアルがなければ初動が遅れますし、マニュアルがあっても専門家の支援がなければ適切な対応ができないケースもあります。3つの要素をバランスよく整えることが、復旧スピードを最大化するポイントです。BCPにこれらの対策を組み込む方法についてはBCPにサイバー攻撃を入れていますか?で解説しています。
今日から始められる3つの対策
復旧を早めるための対策は、特別な技術や大きな投資がなくても始めることができます。
1つ目は従業員教育です。フィッシング詐欺のメールを開かない、怪しいリンクをクリックしないといった基本的な知識を全社員に共有することが、サイバー攻撃の予防につながります。費用をかけずにすぐに始められる対策です。
2つ目はOSやソフトウェアのアップデートです。最新のセキュリティパッチを適用することで、既知の脆弱性を突いた攻撃を防ぐことができます。
3つ目はサイバー保険の検討です。年間の保険料はパソコン1台の調査費用よりも安く、万が一の際に付帯サービスを通じて専門家のサポートを受けることができます。システム停止が事業停止に直結する企業はシステム停止=事業停止の企業がやるべき対策もあわせてご覧ください。
この記事のまとめ
- 復旧が早い企業はバックアップの定期取得、インシデント対応マニュアルの整備、保険の付帯サービス活用の3つを実践している
- バックアップはクラウド上に保存し、攻撃を受けたネットワークとは物理的に別の場所に保管することが重要
- IT部門がない企業でも、サイバー保険の付帯サービスを「外注」として活用すれば専門家の支援を受けられる
- OSのアップデートや社員教育など、費用をかけずに今日から始められる対策もある
サイバー攻撃からの復旧が早い企業にはどのような共通点がありますか?
バックアップを定期的に取得していること、インシデント対応マニュアルを整備していること、サイバー保険の付帯サービスを活用できる体制があることが共通点です。
バックアップはクラウドとローカルのどちらがよいですか?
しっかり対策を取っている企業はクラウドにバックアップを保存しています。攻撃を受けたネットワークとは別の場所にバックアップがあれば、復旧が大幅に早くなります。
IT部門がない中小企業でも迅速に復旧できますか?
サイバー保険の付帯サービスを活用すれば、専門業者の紹介やコンサルティングを受けることができます。社内にIT部門がなくても、保険の付帯サービスを外注として活用することで適切な対応が可能です。
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