サイバー攻撃からの復旧期間は?実態を解説
この記事のポイント
サイバー攻撃からの復旧には数日から数ヶ月かかることがあります。フォレンジック調査やサーバー再構築が必要で、事前準備の有無で大きく差が出ます。復旧期間の実態と短縮のポイントを専門家が解説します
サイバー攻撃からの復旧には、事前準備の状況によって数日から1年以上の差が生まれます。フォレンジック調査やサーバー再構築には想像以上の時間がかかり、その間の業務停止が企業に深刻なダメージを与えます。復旧期間の実態と、期間を左右する要因を解説します。

サイバー攻撃を受けたら何が起こるのか
サイバー攻撃を受けた企業では、通常の業務を即座に再開することが難しいケースがほとんどです。被害の全体像を把握し、安全な状態に戻すまでに複数のステップが必要です。
まず、被害を受けたシステムをネットワークから切り離す作業が発生します。感染が他のシステムに広がることを防ぐため、サーバーやパソコンをネットワークから隔離する必要があります。
次にフォレンジック調査が始まります。これはパソコンやサーバーを1台ずつ調べて、攻撃の経路や被害の範囲を特定する専門的な調査です。この調査だけでもパソコン1台あたり約100万円の費用がかかり、調査期間も数週間から数ヶ月を要します。
そして調査が完了した後に、ようやくシステムの再構築が始まります。サイバー保険で補償される調査・復旧費用の全体像についてはサイバー保険の補償範囲は?調査・復旧費用を解説で詳しく解説しています。
復旧までの具体的なタイムライン
実際のサイバー攻撃からの復旧には、どのくらいの期間がかかるのでしょうか。一般的な復旧プロセスを段階ごとに整理します。
| フェーズ | 期間の目安 |
|---|---|
| 初動対応とシステム切り離し | 当日から数日 |
| フォレンジック調査 | 2週間から数ヶ月 |
| システム再構築と復旧 | 数週間から数ヶ月 |
初動対応では被害を受けたシステムの隔離と、保険会社や専門業者への連絡を行います。この段階でのスピードが、その後の復旧期間に大きく影響します。
フォレンジック調査は復旧期間の中で最も時間がかかる工程です。パソコンの台数が多ければ多いほど調査期間は長くなり、従業員30人から50人規模の企業でも数ヶ月を要するケースがあります。
システム再構築では、攻撃を受けたサーバーに代わる新しいシステムを構築します。バックアップがある企業はこの工程が大幅に短縮されますが、バックアップがない場合はゼロからの再構築となり、さらに時間がかかります。

事前準備がまったくできていなかった場合、復旧にはどのくらいかかりますか?
売上50億円の中小企業で起きた実例
実際にサイバー攻撃を受けた中小企業の事例をもとに、復旧のプロセスと期間を見ていきます。
売上50億円規模、従業員30人から50人の中小企業がランサムウェアに感染しました。身代金を要求するタイプではなく、情報をロックしてアクセスできなくするタイプのランサムウェアでした。
土日の間にシステムが感染し、月曜日の朝にパソコンを開いたら異常な状態になっていたという経緯です。社内にIT部門があり、セキュリティ対策もしっかり行っていた企業でしたが、それでも被害に遭いました。
復旧が早い企業と遅い企業の違いについては復旧が早い企業と遅い企業の違いとは?で詳しく解説しています。この企業の復旧プロセスは以下の流れで進みました。
- 初動で保険会社に連絡し、付帯サービスの事故対応サポートを活用
- 保険会社が専門業者を紹介し、フォレンジック調査を実施
- 被害を受けたサーバーを切り離して原因調査のために保管
- 新しいサーバーを構築して業務を再開
最終的に保険金は約1,200万円が認定されました。そのうち事故対応費用だけで約1,100万円を占めており、フォレンジック調査費用が最大の費目でした。
復旧期間を左右する3つの要因
サイバー攻撃からの復旧期間は、事前準備の有無によって大きく変わります。復旧を早める主な要因は3つあります。
1つ目はインシデント対応マニュアルの有無です。サイバー攻撃を受けた時にどこに連絡し、何をすべきかを事前に決めておくことで、初動対応のスピードが格段に上がります。マニュアルを社内で共有し、全員が認識できている状態が理想です。
2つ目はバックアップの有無です。サイバー攻撃を受けてネットワークにアクセスできなくなった場合でも、別のネットワークにバックアップがあれば、そこから通常業務に戻ることができます。さらに、バックアップと攻撃を受けたネットワークの差を調べることで、被害箇所の特定も容易になります。
3つ目はサイバー保険の付帯サービスの活用です。保険会社の付帯サービスには事故発生後のサポートが含まれており、専門業者の紹介やコンサルティングを受けることができます。自社だけで対応するよりも圧倒的に早く適切な対応が進みます。付帯サービスの具体的な内容はサイバー保険のインシデント対応サービスを徹底解説で紹介しています。
サーバー切り離しと再構築の実際
復旧作業で特に時間がかかるのが、サーバーの切り離しと再構築です。
被害を受けたサーバーは、証拠保全のためにそのまま保管する必要があります。フォレンジック調査のためにデータを書き換えずに保存しておかなければならず、この間は当然そのサーバーを業務に使うことはできません。
そのため、業務を再開するには新しいサーバーを構築する必要があります。この再構築にかかる費用と時間も復旧期間を長引かせる要因です。

サーバーを切り離している間、業務は完全に停止してしまうのですか?
業務の停止期間はシステムへの依存度によって大きく異なります。ITに強く依存する企業では、システムが使えないだけで売上が大幅に下がったり、営業そのものができなくなったりします。一方、手作業で代替できる業務がある企業は、限定的な業務継続が可能です。
いずれにしても、復旧期間中の売上減少や追加コストは避けられません。こうした逸失利益もサイバー保険の損害項目として補償されるため、事前に保険で備えておくことが重要です。業務停止中の損失補償について詳しくは業務停止の損失もカバー?サイバー保険の利益補償をご覧ください。
保険金の着金までの期間
復旧作業と並行して気になるのが、保険金がいつ手元に届くかという点です。
保険金の着金時期は、事前準備の状況によって大きく異なります。インシデント対応マニュアルが整備されていて、すぐに適切な対応ができた企業であれば、事故発生から1ヶ月以内に保険金が着金する可能性があります。
一方、事前準備がまったくできていなかった場合は、調査や対応に時間がかかるため、保険金の着金まで1年以上かかるケースもあります。
復旧を早めるための具体的な対策
復旧期間を短縮するために、今日からできる対策を整理します。
まずバックアップの定期取得です。クラウド上にバックアップを保存しておけば、攻撃を受けたシステムとは別の場所からデータを復元できます。しっかり対策を取っている企業はクラウドにバックアップを上げており、これが復旧を早める大きな要因になっています。
次にインシデント対応マニュアルの作成です。サイバー攻撃を受けた際に誰が何をするのか、どこに連絡するのかを事前に決めておくことで、初動対応の遅れを防ぐことができます。
そしてサイバー保険への加入です。保険の付帯サービスを活用すれば、事故発生直後から専門家のサポートを受けることができます。自社だけで対応体制を整えるのは相当なコストがかかりますが、保険の付帯サービスを外注として活用することで、効率的に復旧を進めることが可能です。BCPにサイバー攻撃対策を組み込む方法についてはBCPにサイバー攻撃を入れていますか?で解説しています。
この記事のまとめ
- サイバー攻撃からの復旧には数日から1年以上かかることがあり、事前準備の有無が復旧期間を大きく左右する
- フォレンジック調査はパソコン1台100万円で、復旧期間の中で最も時間とコストがかかる工程
- バックアップの有無、インシデント対応マニュアル、サイバー保険の付帯サービスが復旧を早める3つの要因
- 情報漏洩がないランサムウェアでも復旧費用は1,000万円を超えることがある
サイバー攻撃からの復旧にはどのくらいの期間がかかりますか?
事前準備が整っている企業であれば数日から1ヶ月程度で復旧できることもありますが、準備ができていない場合は半年から1年以上かかることもあります。
フォレンジック調査とは何ですか?
サイバー攻撃の原因や被害範囲を特定するために、パソコンやサーバーを1台ずつ調査する専門的な作業です。費用はパソコン1台あたり約100万円で、復旧期間が長くなる大きな要因です。
復旧期間を短縮するために何ができますか?
インシデント対応マニュアルの事前作成、定期的なバックアップ、サイバー保険の付帯サービスの活用が有効です。特にバックアップがあれば、被害を受けたシステムと比較して損害箇所の特定も容易になります。
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