サイバー保険の補償範囲は?調査・復旧費用を解説
この記事のポイント
サイバー保険は損害賠償だけでなく、フォレンジック調査(1台100万円)や通知費用、信用回復費用もカバーします。実際に最も費用がかかるのは事故対応費用です。補償範囲の全体像を専門家が解説します
サイバー保険がカバーするのは損害賠償金だけではありません。実際に最も費用がかかるのはフォレンジック調査や通知費用などの事故対応費用で、パソコン1台の調査だけで100万円が必要です。サイバー保険の補償範囲の全体像を解説します。

サイバー保険の3つの補償の柱
サイバー保険の補償は大きく3つの柱で構成されています。それぞれの内容を理解することで、自社に必要な補償を適切に選ぶことができます。
- 損害賠償責任の補償(情報漏洩による第三者への賠償)
- 事故対応費用の補償(調査、通知、復旧にかかる費用)
- 利益損害の補償(システム停止による営業損失)
この3つの中で、中小企業が実際に使うことが最も多いのは事故対応費用の補償です。サイバー保険の専門家によると、賠償責任の補償が使われるケースはそれほど多くなく、被害の大部分は自社内の対応費用で占められます。なぜ個人情報漏洩の相談が最も多いのかについてはサイバー保険の相談で個人情報漏洩が最多な理由で解説しています。
フォレンジック調査が最大の費用項目
フォレンジック調査とは、サイバー攻撃を受けたパソコンやサーバーを1台ずつ調べ、攻撃の経緯や被害範囲を特定する専門的な調査です。
この調査の費用はパソコン1台あたり約100万円で、サイバー保険の補償項目の中で最も高額になるケースが多いです。

パソコン1台100万円は高すぎませんか?全台調査する必要があるのですか?
実際の事故対応事例では、従業員30人から50人規模の中小企業がランサムウェアに感染し、事故対応費用だけで約1,100万円がかかりました。フォレンジック調査費用が最も大きな費目で、そのほかにサーバーの切り離しや新しいシステムの構築費用が加算されています。ランサムウェア被害で見落としがちなコストについてはランサムウェアの隠れたコストとは?も合わせてご確認ください。
通知費用と超過人件費
フォレンジック調査以外にも、見落としがちな費用項目があります。
まず通知費用です。サイバー攻撃を受けたことを関係者に通知するための費用で、郵送費やコールセンターの設置費用などが含まれます。個人情報保護法の改正により報告義務が強化されたため、通知費用は以前よりも重要な項目になっています。
次に超過人件費です。サイバー攻撃が発生すると、社内のIT部門を中心に復旧作業に追われます。通常業務に加えて残業や休日出勤で対応にあたるため、その超過分の人件費が発生します。
信用回復費用は保険会社の承認が必要
サイバー攻撃や情報漏洩が発生した後、企業の信用を回復するための費用もサイバー保険でカバーできる場合があります。ただし、これには条件があります。
信用回復費用を保険で対応するためには、保険会社の事前承認が必要です。どのような信用回復策を実施するのかを事前に保険会社に通知し、承認が得られれば保険金として支払われます。
具体的な信用回復策としては以下のようなものがあります。
- 再発防止策の策定と実施
- セキュリティ対策の強化
- 顧客への説明会の開催
逸失利益の補償も重要
ITに強く依存している企業の場合、システム停止による営業損失も大きな損害になります。ランサムウェアでシステムにアクセスできなくなると、売上が大幅に下がったり、そもそも営業ができなくなったりする事態に陥ります。
特にECサイトを運営している企業の場合、システムが停止すれば売上がゼロになることもあります。復旧までに数日から数週間かかるケースもあり、その間の機会損失は深刻です。
こうした逸失利益もサイバー保険で補償されます。ただし、保険金額の設定には注意が必要です。
逸失利益の補償を適切に受けるためには、契約時に自社の利益規模を正確に伝え、それをカバーできるだけの保険金額を設定しておく必要があります。保険の専門家と相談しながら、自社の業務状況に合った保険設計をすることが重要です。
補償項目の全体像
サイバー保険でカバーできる主な費用項目を一覧で整理します。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| フォレンジック調査 | パソコン1台100万円、最大の費目 |
| 通知費用 | 関係者への通知にかかる費用 |
| 超過人件費 | IT部門の残業代など |
| 信用回復費用 | 保険会社の承認が必要 |
| 再発防止費用 | セキュリティ対策の強化費用 |
| 逸失利益 | システム停止による営業損失 |
付帯サービスで事故対応をサポート
サイバー保険の大きなメリットのひとつが、保険会社が提供する付帯サービスです。中小企業がサイバー攻撃を受けた場合、どこに連絡して何をすればいいのかわからないケースがほとんどです。
サイバー保険に加入していれば、事故発生後の対応を保険会社の専門チームがサポートしてくれます。具体的には以下のようなサポートが受けられます。
- 初動対応の指示とアドバイス
- フォレンジック調査の専門業者紹介
- 弁護士や法務の専門家への取り次ぎ
- 個人情報保護委員会への報告サポート
実際の事故対応事例では、お客さんとしては「どこに何を連絡すれば原因調査できるのか」がわからなかったところ、サイバー保険の付帯サービスを通じて専門業者を紹介してもらい、スムーズに対応できたという報告があります。
自社だけで事故対応の体制を整えるには相当なコストがかかりますが、サイバー保険の付帯サービスを活用することで、外注するようなイメージでインシデント対応を任せることができます。付帯サービスの詳しい内容はサイバー保険のインシデント対応サービスを徹底解説で紹介しています。
平常時のリスクモニタリングも活用できる
サイバー保険の付帯サービスには、事故発生時だけでなく平常時に利用できるものもあります。サイバーリスクモニタリングサービスでは、自社のホームページのセキュリティが十分かどうか、社内ネットワークにリスクがないかといった点をチェックできます。
事前にリスクを把握しておくことで、攻撃を受ける前に対策を講じることができます。保険料を支払って補償を受けるだけでなく、こうした付帯サービスを積極的に活用することがセキュリティ対策にもつながります。個人情報を扱う企業が取り組むべき具体的な対策は個人情報を扱う中小企業が最低限やるべき5つの備えでまとめています。
個人情報保護法改正とサイバー保険の関係でも解説していますが、法改正で報告義務が強化されたことにより、こうした付帯サービスの重要性はさらに増しています。
保険金額は最低1億円を目安に
サイバー保険の保険金額は、最低でも1億円はつけておくべきとされています。フォレンジック調査だけで数百万円から1,000万円以上、そこに通知費用や超過人件費、逸失利益を加えると数千万円規模になることがあるためです。
保険料は売上規模や業種によって変わりますが、情報漏洩限定の補償であれば年間数万円から加入できます。フルカバーのプランでも、中小企業であれば十分に負担できる保険料で設計可能です。
パソコン1台の調査に100万円かかることを考えれば、年間数万円の保険料でリスクヘッジしておくことは合理的な判断です。
保険の専門家は「パソコンを使っている企業であれば、規模を問わず基本的にサイバー保険に入った方がいい」と述べています。セキュリティ対策をしっかり行っていた企業でもサイバー攻撃の被害に遭う可能性がある以上、保険による金銭面の備えは重要です。
個人情報漏洩の損害賠償額の実態も合わせて確認しておくと、必要な補償額の目安がつかみやすくなります。
この記事のまとめ
- サイバー保険は損害賠償だけでなく、フォレンジック調査、通知費用、超過人件費、逸失利益など幅広い費用をカバーする
- フォレンジック調査はパソコン1台あたり100万円で、サイバー保険の費用項目の中で最大の費目
- 信用回復費用は保険会社の事前承認があれば保険金として支払われる
- 保険金額は最低1億円を目安に設定し、自社の利益規模に合った保険設計が重要
フォレンジック調査とは何ですか?
パソコンやサーバーを1台ずつ調査し、サイバー攻撃の経緯や被害範囲を特定する専門的な調査です。費用はパソコン1台あたり約100万円で、サイバー保険の費用項目の中で最も高額になることが多いです。
信用回復費用はサイバー保険でカバーできますか?
保険会社の事前承認があれば、信用回復のための費用もサイバー保険で補償されます。どのような対策を実施するか事前に保険会社に通知し、承認を得る必要があります。
サイバー保険で最も使われる補償は何ですか?
実際に最も使われるのは事故対応費用の補償です。フォレンジック調査費用、通知費用、超過人件費などが中心で、損害賠償責任の補償が使われるケースは比較的少ないです。
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