限られた予算で優先すべきセキュリティ対策4選
この記事のポイント
予算が限られた中小企業が取引先の信頼を得るために優先すべきセキュリティ対策を解説。OS更新、多要素認証、バックアップ、従業員教育の4つの基本対策とサイバー保険の活用法を紹介します。
取引先からセキュリティ対策の強化を求められたものの、「予算も人員も限られている中で、何から手をつければよいのかわからない」と悩む中小企業の経営者は少なくありません。すべてのリスクに完璧に対応するのは現実的ではなくても、限られた予算で最大の効果を生む対策は存在します。
この記事では、コストを抑えながら取引先の信頼を得るために優先すべきセキュリティ対策を、専門家の知見をもとに解説します。

なぜ中小企業にセキュリティ対策が必要なのか
「うちは小さい企業だから狙われるわけがない」と考える経営者はまだ多いですが、現実はそうではありません。サイバー攻撃の傾向は大きく変わっています。
中小企業がサイバー攻撃を受けた場合、以下のような被害が発生し得ます。
- フォレンジック調査費用としてパソコン1台あたり約100万円
- システム復旧や新しい機器の導入費用
- 事業停止による売上の減少
- 取引先からの信用の失墜

中小企業の場合、実際にどのくらいの被害額になるのですか?
実際に売上50億円規模の中小企業がランサムウェアの被害に遭ったケースでは、フォレンジック調査を中心とした事故対応の費用だけで1,100万円以上がかかりました。情報漏洩がなくてもこれだけの費用が発生するのです。ランサムウェアへの具体的な備えについては、中小企業が今すぐやるべきランサムウェア対策5選で詳しく解説しています。
優先度1位 OSやソフトウェアの更新を徹底する
コストをかけずにすぐ実施でき、効果も高いセキュリティ対策がOSやソフトウェアの更新です。
なぜOSの更新が最優先なのか
サイバー攻撃の多くは、OSやソフトウェアの既知の脆弱性を突いて行われます。セキュリティアップデートは、この脆弱性を修正するために提供されるものです。更新を怠ると、すでに対策方法が公開されている攻撃に対して無防備な状態になります。
実施のポイント
- Windowsの場合はWindows Updateを自動更新に設定する
- macOSの場合もソフトウェアアップデートの自動更新を有効にする
- 業務で使用するアプリケーション(ブラウザ、オフィスソフトなど)も最新版に保つ
- 更新によって業務ソフトが動かなくなるリスクがある場合は、事前にテストする
優先度2位 多要素認証を導入する
多要素認証(MFA)は、パスワードだけに頼らないログイン方式です。パスワードに加えて、スマートフォンの認証アプリやSMSによる認証コードを組み合わせることで、不正アクセスのリスクを大幅に低減できます。
多要素認証が有効な理由
パスワードが流出しても、多要素認証が設定されていれば第三者はログインできません。特にVPN(仮想プライベートネットワーク)やクラウドサービスへのアクセスに多要素認証を導入することが効果的です。
導入の手順
- 社内で利用しているクラウドサービス(メール、ファイル共有、会計ソフトなど)の一覧を作る
- 各サービスの多要素認証の設定方法を確認する
- 管理者アカウントから優先的に多要素認証を有効にする
- 全従業員のアカウントに順次展開する
多くのクラウドサービスでは、多要素認証の機能が標準で搭載されており、追加費用なしで利用できます。

多要素認証って設定が面倒そうですが、全社員に導入するのは大変ではないですか?
初期設定には多少の手間がかかりますが、一度設定すれば日常的な負担はほとんどありません。スマートフォンの認証アプリを使えば、ログイン時にワンタップで認証が完了します。
優先度3位 バックアップを確実に取得する
ランサムウェアに感染した場合、データが暗号化されてアクセスできなくなります。この被害からの復旧手段として最も有効なのがバックアップです。
バックアップのポイント
- 社内ネットワークから切り離された場所にバックアップを保存する
- クラウドストレージの利用も有効
- 少なくとも週に1回はバックアップを取得する
- 定期的にバックアップからの復元テストを行う
バックアップは、事業継続の最後の砦です。サイバー攻撃だけでなく、機器の故障や自然災害からの復旧にも役立ちます。
優先度4位 従業員教育を定期的に実施する
サイバー攻撃の最も多い侵入経路は、従業員がフィッシングメールのリンクを開いてしまうことです。技術的な対策だけでなく、人的な対策も非常に重要です。
教育内容の例
- フィッシングメールの見分け方(不審な送信元、緊急性を煽る文面、URLの確認)
- 不審なメールを受信した際の報告ルール
- パスワード管理の基本(使い回しの禁止、定期変更)
- 個人情報の取り扱いルール
- リモートワーク時のセキュリティ注意点
教育は一度きりではなく、定期的に実施することが重要です。四半期に1回程度の頻度で注意喚起や事例共有を行うだけでも、従業員のセキュリティ意識は大きく向上します。リモートワーク環境でのセキュリティ対策については、今日からできるテレワークのセキュリティ対策5選も参考にしてください。
プラスアルファの備え サイバー保険への加入
上記4つの対策を実施したうえで、さらに検討すべきなのがサイバー保険への加入です。
なぜ対策だけでは不十分なのか
セキュリティ対策を万全に行っていても、サイバー攻撃を完全に防ぐことは困難です。
実際に、IT部門を持ちセキュリティ対策をしっかり行っていた企業でも、ランサムウェアの被害に遭ったケースがあります。対策は「事故の確率を下げるもの」であり、事故をゼロにはできません。保険は「事故が起きた際の経済的損失をカバーするもの」として、対策とは異なる役割を果たします。万が一の事故発生時に保険で受けられるサポートについては、サイバー保険のインシデント対応サービスを徹底解説をご覧ください。
サイバー保険の費用感

サイバー保険の保険料ってどのくらいですか?中小企業にも手が届く金額なのでしょうか?
サイバー保険の保険料は企業の売上と業種によって異なりますが、最も簡易的なプランであれば年間数万円から加入できます。
| 条件 | 保険料の目安 |
|---|---|
| 売上数千万円〜1億円、情報漏洩限定補償 | 年間数万円 |
上記は一般的な目安であり、実際の保険料は保険会社、プラン、補償内容、業種などの条件により異なります。
セキュリティ対策ソフトの年間ライセンス料と同程度のコストで、万が一の際の数百万円〜数千万円の損害をカバーできると考えると、費用対効果は高いと言えます。
対策の優先順位を決めるときの考え方
限られた予算でセキュリティ対策を進める際に、何を基準に優先順位を決めるかは重要なポイントです。
以下の3つの軸で考えると整理しやすくなります。
- コストの低さ(無料〜低コストで実施できるか)
- 効果の高さ(攻撃リスクをどれだけ下げられるか)
- 実施のしやすさ(専門知識がなくても導入できるか)
この3つの軸で評価すると、OS更新が最も優先度が高く、次いで多要素認証、バックアップ、従業員教育の順になります。そしてこれらの対策を行ったうえで、残存リスクに対する備えとしてサイバー保険を検討するという流れが合理的です。取引先からセキュリティ対策を求められた際の具体的な対応手順は、取引先からセキュリティ要求が来たら?中小企業の対応法で解説しています。セキュリティ体制を整えて取引先から選ばれる企業になる方法は、選ばれる取引先になるためのセキュリティ対策と保険もあわせてご覧ください。
この記事のまとめ
- OS更新は費用ゼロで始められる最も簡易的で効果的なセキュリティ対策
- 多要素認証、バックアップ、従業員教育も低コストで実施できる基本対策
- セキュリティ対策をしていてもサイバー攻撃は完全には防げないため、保険での備えも重要
- サイバー保険は年間数万円から加入でき、対策ソフトと同程度のコストで万が一に備えられる
セキュリティ対策の予算がほとんどない場合、何から始めるべきですか?
まずOSやソフトウェアの更新を徹底することです。費用ゼロで実施でき、最も簡易的でありながら効果の高い対策です。次に多要素認証の導入、バックアップの取得と進めていきましょう。
サイバー保険はどのくらいの費用で加入できますか?
最も簡易的なプランであれば年間数万円の保険料で加入できます。情報漏洩限定補償のプランで、売上が数千万円〜1億円程度の企業が対象の目安です。売上と業種によって保険料が変わります。
セキュリティ対策ソフトを入れていればサイバー保険は不要ですか?
いいえ、セキュリティ対策ソフトだけでは不十分です。対策をしっかり行っていた企業でもサイバー攻撃の被害に遭うケースがあります。万が一の際の経済的な備えとしてサイバー保険は重要です。
従業員教育は具体的に何をすればよいですか?
不審なメールの見分け方と対処法の周知が最も重要です。フィッシングメールのリンクを開いてしまうケースが最も多い感染経路です。定期的な教育と注意喚起を継続することが大切です。
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