火災保険 店舗併用住宅|3パターンで保険の違いを解説
この記事のポイント
店舗併用住宅の火災保険は個人用で加入できます。専用住宅・併用住宅・専用店舗の3パターンで保険商品が異なり、併用住宅は住居部分があるため個人用火災保険の対象です。選び方を専門家が解説します。
店舗併用住宅を所有している方や、これから建築を予定している方にとって、火災保険の選び方は悩ましい問題です。「店舗が入っていると住宅用の保険には入れないのでは?」「企業向けの高い保険が必要になるのでは?」と心配される方が多くいらっしゃいます。
結論として、店舗併用住宅は人が居住しているため個人用の火災保険で加入できます。一方、人が居住していない専用店舗や専用事務所は個人用火災保険では引き受けできず、企業総合保険などの企業向け商品が必要です。この記事では、専用住宅・併用住宅・専用店舗という 3 つのパターンに分けて、それぞれの火災保険の違いと選び方を専門家への取材をもとに解説します。

店舗併用住宅とは
店舗併用住宅とは、一つの建物の中に店舗(または事務所)と住居が共存している建物のことです。よくある例としては、1 階部分を店舗として営業し、2 階以上を住居として使用するケースが挙げられます。
個人商店や飲食店、美容室、クリニック、事務所などを自宅と一体の建物で運営しているケースは全国に数多くあります。このような併用住宅は、通勤の手間がなく家賃の二重負担を避けられるというメリットがある一方で、火災保険の選び方が住宅専用の建物とは異なるため注意が必要です。

店舗併用住宅って、具体的にはどんな建物が該当するのですか?
併用住宅の具体例
店舗併用住宅に該当する建物にはさまざまな形態があります。
- 1 階が飲食店、2 階が住居
- 1 階が美容室やクリニック、2 階以上が住居
- 1 階が物販店や事務所、2 階が住居
- 自宅の一部を教室やサロンとして利用
これらはいずれも住居部分を含むため、火災保険の分類上は「併用住宅」として取り扱われます。
火災保険の基本的な仕組みを理解したうえで、ご自身の建物がどのパターンに該当するかを確認しましょう。
火災保険の 3 パターン(専用住宅・併用住宅・専用店舗)
火災保険では、建物の使用用途によって加入する保険商品が異なります。大きく分けると「専用住宅」「併用住宅」「専用店舗・事務所」の 3 パターンがあり、それぞれ保険の仕組みや保険料が変わります。
| パターン | 該当する建物 | 加入する保険 |
|---|---|---|
| 専用住宅 | 居住専用の戸建て・マンション | 個人用火災保険 |
| 併用住宅 | 店舗や事務所と住居が一体の建物 | 個人用火災保険 |
| 専用店舗・事務所 | 人が居住していない店舗・事務所・工場 | 企業総合保険など |
この 3 パターンの違いを正しく理解しておくことが、火災保険選びで失敗しないための第一歩です。以下ではそれぞれのパターンについて詳しく解説します。
パターン 1: 専用住宅の場合
専用住宅とは、建物全体が居住目的のみに使用されている住宅のことです。一般的な戸建て住宅やマンションの住居部分がこれに該当します。
専用住宅は住宅物件として扱われ、個人用火災保険で加入します。保険料率は 3 パターンの中で一般的に低く設定される傾向にあり、火災・風災・水災・盗難・破損汚損など住まいに関するリスクを幅広く補償できます。
保険の対象は「建物」と「家財」の 2 つです。建物は柱や屋根、壁など建物本体とそれに付随する設備(エアコンや浴槽など)を指し、家財はテレビや冷蔵庫、家具、衣類など建物内にある生活用の動産を指します。
専用住宅の火災保険の選び方については火災保険の選び方で詳しく解説しています。
パターン 2: 併用住宅の場合
併用住宅は、店舗や事務所と住居が一体となった建物です。前述のとおり個人用の火災保険で加入できるのが大きな特徴です。

併用住宅だと個人用の火災保険で入れるということですが、店舗部分の補償もカバーされるのですか?
併用住宅で個人用火災保険に加入する場合の補償対象を整理すると次のようになります。
- 建物全体(住居部分と店舗部分の構造体): 個人用火災保険で補償
- 住居部分の家財(家具、家電、衣類など): 個人用火災保険の家財補償で対応
- 店舗部分の什器備品や商品: 個人用の家財補償では対象外が一般的
パターン 3: 専用店舗・事務所の場合
専用店舗・事務所とは、人が居住していない建物で営業活動のみに使用されている物件です。テナントビルに入居して営業している店舗や、独立した店舗建物、オフィスビル、工場、倉庫などがこれに該当します。
専用店舗・事務所の場合は個人用火災保険では引き受けできず、企業総合保険や事業活動総合保険といった企業向けの保険商品で加入する必要があります。
企業向け火災保険には以下のような特徴があります。
- 火災補償に加えて休業補償や賠償責任補償をセットにできる
- 業種によって保険料率が異なる(飲食店は事務所より割高)
- 保険料の算出基礎が面積だけでなく売上高になる場合がある
- 個人用火災保険より保険料が高い傾向がある
専用店舗向けの火災保険については店舗の火災保険で、テナント入居時の保険についてはテナントの火災保険で詳しく解説しています。
個人用火災保険で入れる条件
店舗併用住宅が個人用火災保険で加入できるとはいえ、すべてのケースで無条件に引き受けてもらえるわけではありません。ここでは、個人用火災保険で加入するための条件を詳しく解説します。
居住の実態があること
個人用火災保険で併用住宅が引き受けられる最大の条件は、建物に「居住の実態がある」ことです。つまり、実際に人が住んでいる住居スペースが建物内に存在している必要があります。
住民票を置いているだけで実際には住んでいないケースや、住居として登記されているが実態は全フロアを事業用に使用しているケースでは、個人用火災保険の対象外となる可能性があります。
住居部分の面積割合
保険会社によっては、住居部分の面積が建物全体に占める割合を基準にしている場合があります。一般的には住居部分が延床面積の 50% 以上であれば住宅物件扱い、50% 未満でも併用住宅として個人用火災保険に加入できるケースが多いですが、保険会社ごとに取り扱い基準が異なります。
面積割合によって保険料率に影響が出る場合もあるため、建物の図面を用意したうえで保険代理店に相談することをおすすめします。
業種による制限
併用住宅の店舗部分で営業している業種によっては、個人用火災保険の引き受けに制限がかかることがあります。特に火災リスクが高いとされる業種(大規模な飲食店や危険物を扱う事業など)では、保険会社から個人用ではなく企業向け保険への加入を求められるケースもあります。
一般的な小売店、美容室、事務所、クリニックなどの業種であれば、個人用火災保険で加入できるケースが多いです。ただし保険会社によって引き受け基準が異なりますので、事前にご確認ください。
飲食店併用住宅の保険については飲食店の火災保険も参考にしてください。

企業用保険が必要になるケース
店舗併用住宅であっても、状況によっては企業向けの保険を別途検討する必要があるケースがあります。ここでは、どのような場合に企業用保険が必要になるかを解説します。
店舗部分の什器備品・商品在庫を守りたい場合
前述のとおり、個人用火災保険の家財補償では事業用の什器備品や商品在庫は対象外となるケースが一般的です。店舗部分に高額な業務用設備や大量の在庫商品がある場合は、企業向けの動産保険や事業者向けの特約を別途付帯することを検討しましょう。
店舗部分の什器備品・商品を守るための保険としては以下の選択肢があります。
- 企業総合保険の什器備品・商品担保
- 動産総合保険
- 個人用火災保険への事業者向け特約の付帯(保険会社による)

併用住宅の場合、建物は個人用保険で入って、店舗の什器備品だけ別の保険に入るということもできるのですか?
賠償責任に備えたい場合
店舗を営業している以上、お客様や取引先、近隣への賠償責任が発生するリスクがあります。個人用の火災保険には基本的に事業に関する賠償責任補償は含まれていません。
店舗の営業に関する賠償リスクに備えるためには、以下の保険を検討する必要があります。
- 施設賠償責任保険: 店舗の設備や管理の不備で第三者に損害を与えた場合の補償
- 生産物賠償責任保険(PL 保険): 飲食店での食中毒など、提供した商品やサービスによる損害の補償
- 借家人賠償責任保険: テナントとして入居している場合のオーナーへの賠償補償
休業損害に備えたい場合
火災や自然災害で店舗部分が営業できなくなった場合、売上が途絶える一方で家賃や従業員の給与など固定費は発生し続けます。個人用火災保険には休業損害の補償は含まれていません。
店舗の営業停止による損失に備えるためには、企業総合保険に休業補償をセットするか、単独の休業損害保険に加入する必要があります。
併用住宅の火災保険料の目安
店舗併用住宅の火災保険料は、専用住宅と比べてどの程度変わるのか気になる方も多いでしょう。ここでは保険料に影響する要素と目安について解説します。
保険料に影響する主な要素
店舗併用住宅の火災保険料は、以下の要素によって決まります。
- 建物の構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造)
- 建物の所在地(都道府県ごとのリスク評価)
- 延床面積と住居・店舗の面積割合
- 建物の建築価額(再調達価額)
- 補償内容(水災の有無、特約の選択など)
- 契約期間(1 年〜最長 5 年)
- 店舗部分の業種
専用住宅と併用住宅の保険料比較
併用住宅は個人用火災保険で加入できますが、保険料は専用住宅と比べてやや高くなる傾向があります。これは店舗部分のリスクが加味されるためです。
ただし、企業向け火災保険で加入する専用店舗と比較すると、併用住宅の保険料は抑えられる傾向にあります。個人用火災保険の料率体系が適用されるため、同じ建物面積・同じ構造であっても、専用店舗より保険料が低くなるケースが一般的です。
| 建物タイプ | 保険の種類 | 保険料の傾向 |
|---|---|---|
| 専用住宅 | 個人用火災保険 | 基準 |
| 併用住宅 | 個人用火災保険 | 専用住宅よりやや高い傾向 |
| 専用店舗 | 企業総合保険 | 高い傾向 |
(保険料は保険会社・補償内容・建物条件により異なります)
保険料を抑えるためのポイント
併用住宅の火災保険料を抑えるためにはいくつかのポイントがあります。
まず、補償内容の見直しが最も効果的です。高台に立地していて水害リスクが低い場合は水災補償を外すことで保険料を下げられます。また、免責金額を設定して小さな損害は自己負担にすることで、保険料の削減が可能です。
保険料を下げるとしたら補償内容の見直しですよね。それしかないかなと思われます。あとは他の保険会社を一通りあたってみると。
[バリュー・エージェント 今泉寛治氏インタビューより]
次に、複数の保険会社で見積もりを比較することも重要です。同じ補償内容でも保険会社によって数万円の差が出ることは珍しくありません。
また、契約期間を長期にすることで割引を受けることも可能です。5 年契約の一括払いにすれば、1 年契約を 5 回更新するよりも総額で保険料を抑えられます。
店舗併用住宅の火災保険の選び方
ここまで解説してきた内容をふまえて、店舗併用住宅の火災保険を選ぶ際の具体的なステップとチェックポイントを紹介します。
ステップ 1: 建物の分類を確認する
まず、ご自身の建物が「併用住宅」に該当するかどうかを確認します。人が実際に居住しているかどうかがポイントです。
居住の実態がある併用住宅であれば個人用火災保険で加入できます。居住の実態がなければ専用店舗・事務所として企業向け保険の検討が必要です。
建物の図面を用意し、住居部分と店舗部分の面積を把握しておきましょう。
ステップ 2: 建物の補償内容を決める
建物の火災保険で補償する範囲を検討します。基本的な火災・風災・落雷に加えて、以下の補償を付けるかどうかを検討します。
- 水災補償: ハザードマップで浸水リスクを確認して判断
- 盗難補償: 店舗を併設しているため検討の価値あり
- 破損・汚損補償: 日常的な事故への備え
- 地震保険: 地震・噴火・津波への備え(火災保険とセットで加入)
ステップ 3: 家財と什器備品の補償を分けて考える
住居部分の家財と店舗部分の什器備品は、それぞれ別の保険で補償する必要がある場合があります。
住居部分の家財は個人用火災保険の家財補償で対応できます。家族構成や生活スタイルに応じて適切な保険金額を設定しましょう。
店舗部分の什器備品については、個人用火災保険の対象外となるケースが多いため、以下の選択肢を検討します。
- 個人用火災保険に事業者向け特約を付帯する(対応している保険会社の場合)
- 企業総合保険で什器備品のみ別途加入する
- 動産総合保険を活用する
ステップ 4: 事業リスクへの備えを検討する
店舗を営業している以上、住宅だけでは必要のない補償を別途検討する必要があります。
- 施設賠償責任保険: お客様や通行人への賠償に備える
- PL 保険: 飲食店や食品販売の場合に検討
- 休業損害補償: 営業停止時の収入減少に備える
- 借家人賠償責任保険: テナントとして入居している場合
ステップ 5: 複数の保険会社で見積もりを比較する
併用住宅の火災保険は、保険会社によって引き受け条件や保険料が大きく異なります。最低でも 3〜4 社の見積もりを取り、補償内容と保険料のバランスを比較しましょう。
保険会社間で比較する際にチェックすべきポイントは以下のとおりです。
- 同じ補償内容での保険料の差
- 併用住宅の引き受け条件(面積割合や業種の制限)
- 事業者向け特約の有無と内容
- 事故時のサポート体制
火災保険の比較方法については火災保険の選び方でも詳しく解説しています。
店舗併用住宅で保険に加入する際の注意点
最後に、店舗併用住宅で火災保険に加入する際の注意点をまとめます。
告知義務を正確に果たす
火災保険の契約時には、建物の使用状況について正確に告知する義務があります。店舗併用住宅の場合、住居部分と店舗部分の面積割合、店舗の業種、営業内容などを正確に保険会社に伝えてください。
告知内容に誤りがあった場合、事故時に保険金が支払われない、または契約が解除されるリスクがあります。
建物の用途変更時は保険の見直しを
建物の用途が変わった場合は、必ず保険の見直しが必要です。例えば以下のようなケースでは、保険内容の変更を検討してください。
- 専用住宅だった建物の 1 階を店舗に改装した場合
- 併用住宅で店舗部分の営業をやめて全フロアを住居にした場合
- 店舗の業種を変更した場合(事務所から飲食店への転換など)
用途変更によって火災リスクの評価が変わるため、適切な保険に切り替えないと補償が受けられない事態になりかねません。
保険金額の設定に注意する
建物の保険金額は再調達価額(同等の建物を新たに建築するのに必要な金額)で設定するのが基本です。近年は人件費や建材費の高騰によって建築費が上がっているため、購入時の金額よりも再調達価額のほうが高くなっているケースが多く見られます。
保険金額の見直しが必要なタイミングについては、建物の増改築時、家族構成の変化、そして火災保険の満期更新時が挙げられます。特に長期契約の満期を迎える際は、保険料が大幅に上がっていることがあるため、複数社で比較検討することをおすすめします。
併用住宅の火災保険についてよくある誤解
店舗併用住宅の火災保険に関して、よくある誤解をいくつか紹介します。
「店舗があると住宅用保険に入れない」は誤解
最も多い誤解がこれです。併用住宅は住居部分があるため個人用の火災保険で加入できます。企業向けの高額な保険に入る必要はありません。ただし、住居の実態があることが前提条件です。
「併用住宅なら店舗部分も全部カバーされる」は誤解
建物の構造体は個人用火災保険で住居・店舗部分ともにカバーされますが、店舗部分の什器備品や商品在庫については個人用の家財補償の対象外となるケースが多いです。店舗の事業資産を守るには別途の保険が必要になる場合があります。
「どの保険会社でも条件は同じ」は誤解
併用住宅の引き受け条件は保険会社によって異なります。面積割合の基準、業種の制限、保険料率、事業者向け特約の有無など、各社で対応が分かれるポイントが多いため、複数社の比較が特に重要です。
この記事のまとめ
- 店舗併用住宅は人が居住しているため個人用の火災保険で加入できる
- 専用住宅・併用住宅・専用店舗の 3 パターンで加入する保険商品が異なる
- 専用店舗や事務所は企業総合保険など企業向け商品が必要
- 個人用火災保険の家財補償では店舗の什器備品は対象外になるケースが多い
- 店舗部分の什器備品や賠償責任は別途企業向け保険で備える必要がある
- 保険会社によって併用住宅の引き受け条件が異なるため複数社で比較が重要
よくある質問
店舗併用住宅の火災保険は個人用で入れますか?
はい、店舗併用住宅は人が居住しているため、個人用の火災保険で加入できます。ただし専用店舗や専用事務所など人が居住していない物件は個人用では加入できず、企業総合保険などの企業向け商品が必要です。
店舗併用住宅と専用店舗で保険料に差はありますか?
はい、大きな差があります。店舗併用住宅は個人用火災保険の対象となるため住宅物件に近い保険料率で加入できますが、専用店舗は一般物件扱いとなり保険料が割高になります。飲食店など火を使う業種はさらに保険料率が上がります。
1階が店舗で2階が住居の建物はどの保険に入ればよいですか?
1階が店舗で2階が住居の併用住宅であれば、個人用火災保険で加入できます。店舗部分と住宅部分をまとめて一つの保険で補償できるケースが多いですが、保険会社によって取り扱い条件が異なるため、複数社に見積もりを取ることをおすすめします。
併用住宅で店舗部分の什器備品も補償されますか?
個人用火災保険の家財補償では事業用の什器備品は対象外となるのが一般的です。店舗部分の什器備品や商品在庫を補償するには、別途企業向けの保険や特約の付帯を検討する必要があります。
関連記事
テナントの火災保険|個人用との違いと補償の選び方
テナント入居者の火災保険は個人用とは別の企業向け商品で加入します。オーナーとの責任分担、借家人賠償や施設賠償の目安、年間保険料2〜3万円程度の小規模事務所の事例を専門家が解説します。
飲食店の火災保険|補償内容と保険料の仕組み
飲食店の火災保険は住宅用とは別の企業総合保険で加入し、調理場の火災リスクに応じて保険料率が決まります。休業補償や賠償責任保険を組み合わせることで事業を守れます。
店舗の火災保険|一般住宅との違いと保険料の仕組み
店舗や店舗兼住宅の火災保険について、一般住宅との保険料の違い、テナント入居時の注意点、飲食店特有のリスクと補償選びのポイントを専門家が解説します。

