テレワークで起きやすいサイバー事故パターン5選
この記事のポイント
テレワーク環境ではフィッシングメール、不正アクセス、VPN脆弱性など特有のサイバー事故が発生しやすくなります。専門家の知見をもとに、よくある事故パターンと具体的な対策を解説します
テレワーク環境では、オフィス勤務では起こりにくいサイバー事故が数多く発生しています。
フィッシングメール被害やVPNの脆弱性を突いた不正アクセスなど、テレワーク特有の事故パターンを知っておくことが、被害を防ぐ第一歩です
この記事では、サイバー保険の専門家への取材をもとに、テレワーク環境で実際に起きやすいサイバー事故のパターンと、その対策を詳しく解説します。

テレワーク環境はなぜサイバー事故が起きやすいのか
テレワーク環境では、オフィスとは異なるセキュリティ上の課題が複数存在します。オフィスであれば会社のIT部門が一元管理していたセキュリティ対策が、テレワークでは従業員個人の環境に依存するようになるためです。
テレワーク環境のセキュリティが脆弱になりやすい主な要因は以下の通りです。
- セキュリティ管理が個人の環境に依存する
- 不審な事象が発生しても即座に相談する相手がいない
- 業務用と私用のネットワークや端末が混在しやすい
- セキュリティに対する緊張感が薄れがち
こうした環境的な要因が重なることで、さまざまなサイバー事故が発生しやすくなっています。テレワーク普及に伴う相談傾向の変化については、テレワーク普及でサイバー保険の相談はどう変わったで詳しく紹介しています。
パターン1 フィッシングメールによるウイルス感染
テレワーク環境で最も発生頻度が高いサイバー事故が、フィッシングメールを介したウイルス感染です。
フィッシングメールとは、取引先や金融機関、システム管理者などを装った偽のメールです。メール内のリンクをクリックしたり、添付ファイルを開いたりすることで、マルウェアに感染したり、IDやパスワードを盗まれたりします。

フィッシングメールが一番多いっていうのは、なぜテレワークだと特に危険なんですか?
テレワーク環境でフィッシング被害が増える理由として、以下の点が挙げられます。
- オフィスのセキュリティフィルターを経由しないメールが届きやすい
- 不審なメールを上司やIT担当にすぐ確認できない
- 在宅勤務による集中力の低下で注意が散漫になりやすい
- 業務メールと私用メールが混在する環境がある
パターン2 VPNの脆弱性を突いた不正アクセス
テレワーク環境で多くの企業が導入しているVPN(仮想プライベートネットワーク)ですが、VPN自体がサイバー攻撃の入口になるケースがあります。
VPN機器やソフトウェアに脆弱性が発見されることは珍しくありません。これを放置すると、攻撃者がその脆弱性を突いて社内ネットワークに侵入するリスクがあります。
VPNに関連する事故パターンとして多いのは次のケースです。
- VPN機器のファームウェアを更新せず脆弱性が放置されていた
- VPN接続時の認証がパスワードのみで、多要素認証が未導入だった
- 退職した従業員のVPNアカウントが無効化されていなかった
- VPNの同時接続数を超過し、一時的にVPN外で接続してしまった
パターン3 自宅Wi-Fiの設定不備による情報漏洩
自宅のWi-Fiルーターのセキュリティ設定が不十分な場合、通信内容を第三者に傍受されるリスクがあります。特に注意が必要なのは以下のようなケースです。
- Wi-Fiルーターの管理画面のパスワードが初期設定のまま
- 古い暗号化方式(WEPやWPA)を使用している
- ルーターのファームウェアが長期間更新されていない
- ゲスト用ネットワークと業務用ネットワークが分離されていない

自宅のWi-Fiルーターの設定なんて気にしたことないんですが、どのくらいリスクがあるんですか?
自宅のWi-Fiルーターの脆弱性を突いた攻撃は実際に報告されています。古い暗号化方式を使っている場合、通信内容が第三者に筒抜けになるリスクがあります。業務データが含まれる通信が傍受されれば、企業の機密情報や顧客の個人情報が漏洩する重大事故につながります。
最低でも、暗号化方式をWPA3またはWPA2に設定し、ルーターの管理画面のパスワードを変更しておくことが推奨されます。自宅Wi-Fi環境での事故と保険適用の関係については、自宅Wi-Fiで仕事中の事故にサイバー保険は使える?で解説しています。
パターン4 私用端末の業務利用によるリスク
BYODと呼ばれる私用端末の業務利用は、テレワーク環境で広く行われています。しかし、私用端末にはセキュリティ上の大きなリスクが伴います。
私用端末の主なリスクは以下の通りです。
- セキュリティソフトが未導入、またはライセンスが切れている
- OSやアプリケーションの更新が遅れている
- 業務データと個人データが同じ端末に保存される
- 家族やその他の利用者がアクセスする可能性がある
私用端末の利用を完全に禁止できない場合でも、最低限のセキュリティ基準を設けることが重要です。セキュリティソフトの導入義務付け、OSの自動更新の有効化、業務用クラウドストレージの利用徹底などのルールを明確にしておく必要があります。コストを抑えながら実施できる対策の優先順位は、今日からできるテレワークのセキュリティ対策5選を参考にしてください。
パターン5 バックアップ不備による被害拡大
サイバー事故そのものとは少し異なりますが、バックアップの不備によって被害が拡大するケースはテレワーク環境で特に多く見られます。
オフィスのサーバーにデータが集約されていた時代は、IT部門が一括でバックアップを管理していました。しかしテレワークでは、従業員のローカル端末にのみデータが保存されているケースもあり、ランサムウェアに感染した場合にデータを復旧できない事態が起こり得ます。
バックアップに関して押さえておくべきポイントは次の通りです。
- クラウドストレージへの定期的なバックアップを行う
- バックアップ先は業務環境とは別のネットワークに保管する
- バックアップからの復旧手順をあらかじめ確認しておく
- バックアップが正常に取れているか定期的に検証する
テレワーク環境の事故に備えてやるべきこと
テレワーク環境でのサイバー事故に備えるためには、技術的な対策と人的な対策の両面からアプローチすることが重要です。
技術面での対策としては、以下が挙げられます。
- OSとソフトウェアを常に最新の状態に保つ
- 多要素認証を全社的に導入する
- VPNを導入し、社外からのアクセスはVPN経由にすることが推奨される
- クラウドバックアップを定期的に実施する
人的な対策としては、以下が効果的です。
- フィッシングメールの見分け方に関する従業員研修を定期的に実施する
- テレワーク時のセキュリティルールを文書化して周知する
- インシデント発生時の報告フローを明確にする
- 定期的にセキュリティ意識の啓発を行う
サイバー保険は年間数万円から加入できるプランもあります。事故が起きてからでは遅いため、テレワークを導入している企業は早めの検討をおすすめします。ランサムウェアへの具体的な備えについては、中小企業が今すぐやるべきランサムウェア対策5選もあわせてご覧ください。保険で補償される調査・復旧費用の詳細は、サイバー保険の補償範囲は?調査・復旧費用を解説で紹介しています。
この記事のまとめ
- テレワーク環境ではフィッシングメール被害が最も多く、一人で判断する場面が増えるため被害リスクが高まる
- VPNの脆弱性や自宅Wi-Fiの設定不備も大きなリスク要因となる
- 私用端末の業務利用やバックアップ不備が被害拡大の原因になりやすい
- 技術的な対策と従業員教育の両面からの取り組みが不可欠
テレワークで最も多いサイバー事故のパターンは何ですか?
フィッシングメールを開いてしまうことによるウイルス感染が最も多いパターンです。テレワーク環境では周囲に相談する人がいないため、被害が増えやすい傾向にあります。
私用端末で業務を行うとどのようなリスクがありますか?
セキュリティソフトの未導入、OSの更新遅延、業務データとプライベートデータの混在など複数のリスクがあります。情報漏洩の原因になるケースもあります。
テレワーク中のサイバー事故は会社の責任になりますか?
基本的に業務中に発生した事故は会社の責任となります。ただし、会社として最低限のセキュリティ対策や従業員教育を行っていたかどうかが問われます。
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