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サイバー保険加入率中小企業費用

日本のサイバー保険加入率はなぜ低い?費用と判断軸

この記事のポイント

日本の中小企業のサイバー保険加入率は8.8%(損保協会2025年調査)にとどまります。海外と比べて低い背景には訴訟リスクや取引条件の差があります。中小企業の保険料は年間数万円から50万円程度で、業務停止時の被害規模・自力対応の可否・外部への影響の3点が加入判断軸となります

日本の中小企業のサイバー保険加入率は8.8%(日本損害保険協会2025年調査)にとどまります。海外と比べて差が大きい背景には、訴訟リスクや取引条件の違いがあります。中小企業でも年間数万円から加入でき、業務停止時の被害規模・自力対応の可否・外部への影響の3つが加入判断の軸となります。

日本のサイバー保険加入率と中小企業の判断軸を解説するイメージ

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の保険商品の推奨・勧誘を目的とするものではありません。保険商品の詳細は各保険会社の約款や重要事項説明書をご確認ください。補償内容や保険料は保険会社・プラン・条件により異なります。

日本の中小企業の加入率は1割未満

日本損害保険協会の「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」によると、中小企業のサイバー保険加入率は8.8%でした(調査対象1,050社)。火災保険の58.6%と比べると大きく差があり、企業向け損害保険の中でも普及が進んでいない部類に入ります(中小企業のリスク意識・対策実態調査(日本損害保険協会))。加入を検討中の企業まで含めればもう少し広がりますが、実際に加入している企業の比率はまだ低い水準にとどまっています。

サイバー攻撃や情報漏洩のニュースが連日報じられる中でも、自社に直接関係するリスクとして捉えられていないケースが多く、サイバー保険の存在を知っていても加入には至っていない企業が大半です。

マネサロくん
マネサロくん

サイバー攻撃の話はよく聞きますが、それでも加入率が低いのはどうしてですか?

平

背景にはいくつかの要因があります。「うちは小さい会社だから狙われないだろう」「セキュリティソフトを入れているから大丈夫」という誤解が広く残っていることが大きな要因です。さらに保険料が高そうというイメージや、サイバー保険自体の認知度がまだ十分でないことも影響していると感じています。

保険種類中小企業の加入率
火災保険58.6%
会社役員賠償責任保険9.1%
サイバー保険8.8%
情報漏えい賠償責任保険7.9%

出典: 日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」(回答対象1,050社)

海外と比べても普及が遅れている

海外と比較すると、日本の加入率の低さがより明確になります。米国では規模の大きい企業を中心に普及が進んでおり、調査によってばらつきはあるものの、中堅・大企業では加入率が半数前後に達するという報告もあります。日本の中小企業の8.8%とは開きがあります。

差の背景には、大きく2つの要因があります。

訴訟リスクの高さ

アメリカは訴訟社会であり、サイバー事故が発生した場合の損害賠償リスクが非常に高い水準にあります。情報漏洩で消費者から集団訴訟を起こされたり、賠償金額が高額に認定されたりする傾向が強く、企業はリスクヘッジとしてサイバー保険を必要としています。

取引条件としての要求

アメリカでは取引先や顧客からサイバー保険への加入を求められる場面が日常的です。「サイバー保険に加入していない企業とは取引できない」という事例が増えており、加入が事実上の取引条件になっています。

一方、日本では取引条件としてサイバー保険を求められる事例はまだ多くなく、自己判断に委ねられている状態が続いています。これが加入率に大きな差として現れています。

近年は日本でも、大手企業や上場企業を中心に、取引先のサイバーリスク管理体制を確認する動きが広がっています。「うちは中小企業だから関係ない」と考えていても、取引先からセキュリティチェックシートやサイバー保険加入の証明を求められる場面が増えてきています。

加入率が高い業界

業界によっても加入率には差があります。サイバー保険の加入率が比較的高いとされる業界は、次の3つです。

業界加入率が高い背景
IT系顧客データを大量に扱う、開発受託でセキュリティ要件が厳しい
建設・製造業大手取引先からセキュリティ対策を求められる、工場停止のリスク大
医療業界患者データ・電子カルテのリスク、医療業務への直接的影響

これらの業界では、自社のリスクが大きいだけでなく、取引先や患者・顧客への影響が大きいことから、サイバー保険を含むリスクマネジメントへの意識が高まっています。

逆に、卸売業・小売業・サービス業など、自社業務がデジタルに大きく依存していないと考えられがちな業界では、まだ加入率が低い傾向があります。

平

ただし「うちの業界は加入率が低いから自社も必要ない」という発想は危険です。業界平均ではなく、自社の業務がサイバー攻撃でどの程度止まるかを起点に判断することをお勧めします。卸売業でも受発注システムが止まれば物流が混乱しますし、小売業でもPOSシステムが止まれば売上が消えます。

「うちは小さい会社」という誤解

最も多い加入見送り理由が、「うちは小さい会社だから狙われない」という認識です。これは実際には逆で、中小企業の方が圧倒的に狙われやすいのがサイバー攻撃の実態です。

理由は2つあります。

セキュリティが弱く侵入しやすい

中小企業は専任のセキュリティ担当者がいなかったり、セキュリティ予算が限られていたりするため、大企業と比べて防御力が低い傾向にあります。攻撃者からすれば「侵入しやすい標的」となります。

大企業への踏み台として利用される

近年特に増えているのが、中小企業を踏み台にして取引先の大企業を狙う攻撃です。攻撃者はいきなり大企業を直接狙うのではなく、まずセキュリティが手薄な中小企業に侵入し、そこを経由して大企業のネットワークに入り込みます。

マネサロくん
マネサロくん

中小企業が踏み台にされた場合、責任はどうなりますか?

平

踏み台にされて取引先の大企業に被害が及んだ場合、踏み台にされた中小企業側に賠償責任を問われる可能性があります。サイバー保険では、自社が踏み台になって取引先に損害を与えた場合の賠償責任に対応できる場合があるので、こうした観点でもサイバー保険を検討する価値があります。

「うちは小さい」ではなく、「うちは小さいからこそ狙われる」という認識が、現代のサイバーリスク管理の出発点になります。

「セキュリティソフトがあるから大丈夫」の落とし穴

もう一つ多い見送り理由が、「セキュリティソフトを入れているから大丈夫」という認識です。これも一面的な見方になります。

セキュリティソフトはマルウェアやウイルスを検知する技術的な防御策ですが、現代のサイバー攻撃には人を狙う攻撃が含まれます。代表例がビジネスメール詐欺(BEC)やアカウント乗っ取りで、これらはセキュリティソフトでは防げません。

BEC詐欺の被害額と対策で詳しく解説しているように、メールアカウントを乗っ取られて取引先になりすまされる手口や、経理担当者を心理的に誘導して送金させる手口は、技術的な防御だけでは止められません。

セキュリティソフトを入れていることと、サイバー攻撃を完全に防げることは別問題です。セキュリティソフトを入れていても完全に防げないサイバー攻撃は存在し、その場合に発生する数百万から数千万の出費に企業として耐えられるかが、加入判断のポイントになります。

サイバー保険・セキュリティ対策の具体的な相談はサイバー保険の専門スタッフへの相談はマネーサロンへから問い合わせ可能です。

中小企業のサイバー保険料の目安

「保険料が高そう」というイメージも、加入見送りの一因になっています。実際の保険料水準を把握しておくと、判断材料になります。

中小企業の場合、サイバー保険は安ければ年間数万円から加入できます。高くても50万円程度というのが一般的な目安で、数百万円という金額にはまずなりません。月額にすれば数千円からスタートできるプランも存在します。

企業規模・業種年間保険料の目安
小規模(年商1億円未満、サービス業)数万円〜
中規模(年商10億円以下、製造業)数十万円
大規模・リスク業種50万円程度〜

※保険料は業種・売上高・補償内容・保険会社により異なります。実際の保険料は複数社から見積もりを取って比較するのが現実的です。

平

業務内容や売上高にもよりますが、月数千円から年間数万円という金額で、業務停止時の備えが整えられると考えれば、費用対効果は十分にあると感じています。問題は「保険料」ではなく「補償内容」で、何にいくら出るのか、付帯サービス(緊急対応・脆弱性診断など)はあるかをしっかり見ることが大切です。

入っていてよかった事例

サイバー保険に加入していて「入っていてよかった」と評価されるのは、保険金が支払われたこと以上に初動対応がスムーズだったことであるケースが多くなっています。

たとえば、あるマーケティング系の中堅企業がランサムウェア被害に遭った事例では、サイバー攻撃発覚直後に保険会社へ連絡し、専門家から具体的な初動手順を受け取りました。指示に従って動いたことで、被害の拡大を防げました。

事後の対応費用は1,000万円台にのぼりましたが、この事例ではその大半が保険金として支払われたと聞いており、企業の実質負担は大幅に減りました(支払われる範囲は契約内容や事故の状況により異なります)。さらに被害そのものも初動対応の質が高かったため大きくならずに済み、「入っていなかったら、どこに相談すればいいのか分からなかった」と振り返っています。

マネサロくん
マネサロくん

保険金が出ること以上に、初動対応が大事なのですか?

平

本当に大事です。サイバー攻撃を受けたとき、最初の数時間から数日の動き方で被害額が10分の1から5分の1に抑えられるケースがあります。保険会社や提携の専門家にすぐ相談できる体制があるかどうかで、その後の業務復旧や賠償リスクが大きく変わってきます。だからこそ、保険金そのものよりも、初動対応の体制を含めて保険を活用していただきたいと思っています。

サイバー保険には緊急対応サービスが付帯していることが多く、24時間365日相談できる体制を持つ保険会社もあります。初動対応がスムーズになることで、被害拡大を防げるだけでなく、経営者や担当者の精神的負担も軽減できます。

加入判断の3つの軸

「サイバー保険に入るべきかどうか」を判断する際、専門家が推奨する3つの軸があります。

1. 業務が止まったときの被害規模

サイバー攻撃を受けて業務が止まったときに、どの程度の被害が発生するかをまず想定します。

  • 工場の生産ラインが止まったら、1日あたりの逸失利益はいくらか
  • 出荷ができなくなったら、納期違反による違約金や信用失墜はどの程度か
  • 受発注システムが止まったら、取引先への影響はどこまで及ぶか

業務停止時のインパクトが大きい企業ほど、リスクを保険で移転する価値が高まります。

2. 自力で対応できるか

サイバー攻撃を受けて一定期間業務が止まった場合に、自社のリソースで対応できるかを評価します。

  • 外部のITコンサルタントやセキュリティ専門家とのつながりはあるか
  • 対応に必要な数百万から数千万の費用を自社で賄えるか
  • フォレンジック調査・復旧作業・顧客対応を並行して実施できる体制があるか

自力対応が難しい場合は、保険にリスクを移転した方が現実的な判断になります。

3. 外部への影響があるか

自社の業務停止やデータ流出が、第三者(取引先・顧客・サプライチェーン全体)に損害を与える可能性があるかを評価します。

  • 自社が踏み台にされて取引先の大企業に被害を与える可能性はあるか
  • 顧客の個人情報が漏洩した場合、賠償請求を受ける可能性はあるか
  • 業務停止により取引先の生産・販売に影響を与える可能性はあるか

外部への影響がある場合は、賠償請求を受けて被害額が数倍に膨れ上がる可能性があるため、保険による備えが特に重要になります。

判断軸重要な問い
業務停止時の被害規模止まったら売上はいくら消えるか
自力対応の可否数百万〜数千万の出費に耐えられるか
外部への影響第三者に賠償することになるか

訴訟環境の変化と今後の見通し

日本の加入率が低い背景には、これまで「日本では訴訟社会化していない」という認識がありました。しかし、ここ数年で訴訟環境にも変化が見られます。

弁護士数の増加

弁護士の数自体が直近で増えており、企業に対して弁護士側から「もっと損害賠償を取れますよ」と営業をかけられる場面が増えていると指摘されています。サイバー事故が起きた際に、被害者側にとって弁護士にアクセスしやすい環境になっているといえます。

消費者裁判手続特例法の改正

2023年には消費者裁判手続特例法の改正が施行され、消費者団体がたくさんの消費者を束ねて訴訟を起こしやすくなりました。個人で数千円のために訴訟を起こすことはありませんが、団体としてまとまれば集団訴訟が成立する可能性が広がっています。

情報漏洩のような事故で、1人あたりの損害が小さくても被害者が大規模に存在する場合、集団訴訟として企業が訴えられるリスクは今後高まっていく可能性があります。サイバー保険の必要性は、こうした訴訟環境の変化も踏まえて検討する価値があります。

賠償責任が発生する場面は法律上の制約があり、すぐにアメリカのような訴訟社会になるわけではありませんが、これまでの感覚とは異なる方向へ変化しつつあるという認識が必要です。

関連リスクとあわせて検討したい論点

サイバー保険の加入判断は、関連リスクとセットで考えるとより総合的に判断できます。たとえばサイバー保険の補償範囲と費用業務停止時の逸失利益補償サイバー攻撃の初動対応などが、判断材料になる論点です。

中小企業特有のリスクについては中小企業がサイバー攻撃で狙われやすい理由で詳しく解説しています。

この記事のまとめ

  • 日本の中小企業のサイバー保険加入率は8.8%(損保協会2025年調査)で、火災保険の58.6%と大きな差がある
  • 米国では規模の大きい企業を中心に普及が進んでおり、訴訟リスクの高さと取引条件としての要求が背景にある
  • 加入率が高い業界はIT系、建設・製造業、医療業界
  • 「うちは小さい会社」「セキュリティソフトを入れている」という見送り理由は誤解を含む
  • 中小企業の保険料は安ければ年間数万円、高くても50万円程度が目安
  • 初動対応がスムーズになることで、被害額が10分の1から5分の1に抑えられた事例もある
  • 加入判断軸は「業務停止時の被害規模」「自力対応の可否」「外部への影響」の3点

サイバー保険の判断軸・無料相談はマネーサロンへ

マネサロくん

よくある質問

日本企業のサイバー保険加入率はどのくらいですか?

日本損害保険協会の2025年調査では、中小企業の加入率は8.8%でした。火災保険の58.6%と比べると大きく差があります。米国では規模の大きい企業を中心に普及が進んでおり、訴訟リスクの高さと取引条件としてサイバー保険加入が求められる背景が普及の差につながっています。

サイバー保険の加入率が高い業界はどこですか?

IT系、建設・製造業、医療業界が加入率の高い業界とされています。取引先からセキュリティ対策を求められやすい業界や、サイバー攻撃の影響が大きい業界で加入が進んでいます。

中小企業のサイバー保険の保険料はいくらですか?

業種や売上高により異なりますが、安ければ年間数万円から、高くても50万円程度で加入できるイメージです。月額数千円から始められるプランもあり、数百万円という金額にはならないとされています。保険会社や契約内容により異なります。

サイバー保険に加入するかの判断軸は何ですか?

判断軸は3つあるとされています。1点目は業務が止まったときに困るか(売上影響・生産ライン停止など)、2点目はサイバー攻撃を受けたとき自力で対応できるか、3点目は被害が外部(取引先・顧客)に及ぶかです。1つでも該当すれば加入を検討する価値があります。

セキュリティソフトを入れていればサイバー保険は不要ですか?

セキュリティソフトでは人を狙うサイバー攻撃(BEC・アカウント乗っ取りなど)は防げないため、それだけで万全とは言えません。さらに完全に防げないサイバー攻撃が起こった時に、数百万から数千万の出費に会社として耐えられるかが加入判断のポイントになります。

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