会社補償(補償契約)とは
一言でいうと
役員等が職務執行に関して責任追及を受けた際の防御費用や賠償金の全部または一部を、会社が肩代わりする契約のこと。2021年3月施行の改正会社法第430条の2で手続きが明文化されました。D&O保険と並ぶ役員保護の仕組みで、両者を組み合わせて設計するのが一般的です。
会社補償(補償契約)とは
会社補償(かいしゃほしょう)とは、役員等が職務の執行に関して損害賠償請求や責任追及を受けた場合に、その対応にかかる費用や賠償金の全部または一部を、会社が肩代わりして負担する仕組みのことです。会社と役員等との間で結ぶ契約を補償契約と呼びます。
2021年3月に施行された改正会社法で第430条の2が新設され、補償契約の内容の決定には取締役会(取締役会非設置会社では株主総会)の決議が必要であることなど、手続きが明文化されました。同じ改正でD&O保険(役員等賠償責任保険契約)に関する第430条の3も新設されており、役員を守る2つの仕組みが法律上セットで整理された形です。
補償の対象になる費用
会社補償の対象は、大きく2つに分かれます。
| 費用の種類 | 内容 |
|---|---|
| 防御費用 | 責任追及への対応にかかる弁護士費用などの費用 |
| 賠償・和解金 | 第三者への損害賠償金や和解金として役員が支払う損失 |
ただし、無制限に補償できるわけではありません。役員が会社に対して負う任務懈怠責任(会社法第423条第1項)の賠償金は対象外とされているほか、役員に図利加害目的があった場合には補償した費用の返還を求めることができるなど、一定の制限が設けられています。
D&O保険との違いと関係
会社補償とD&O保険は、どちらも役員個人の負担を軽減する仕組みですが、支払いの主体が異なります。
- 会社補償は、会社が自らの資金で役員の費用・損失を負担する
- D&O保険は、保険会社が保険金として支払う
会社補償だけに頼ると、大型の賠償事案では会社の資金負担が重くなり、会社の財務が傷つけば結局補償しきれないおそれがあります。逆にD&O保険には免責事由や支払限度額があります。なお、D&O保険には会社が補償契約に基づいて肩代わりした損失を保険の対象とする補償(会社補償への補償)が用意されている場合があり、会社側の負担リスクも保険でカバーできる設計が可能です。このため実務では、両者を組み合わせて役員保護の体制を設計するのが一般的です。
中小企業にとっての意味
会社補償やD&O保険による役員保護の体制は、上場企業だけのものではありません。役員が萎縮せずに経営判断に集中できる環境を整えるという意味で、非上場の中小企業にも共通する論点です。また、社外取締役や社外監査役を招く際に、保護体制の有無が就任判断の材料にされることも増えています。
参考文献
- e-Gov法令検索 - 会社法(平成十七年法律第八十六号)第430条の2 - 補償契約に関する規定
- 日本損害保険協会 - 賠償責任のリスク - 企業の賠償責任リスクと保険の解説
