上塗り基準と壁芯基準とは
一言でいうと
マンションの専有部分と共用部分の境界を定める2つの基準のこと。上塗り基準は壁の内側仕上げ面を境界とし、壁芯基準は壁の中心線を境界とします。どちらの基準を採用するかで専有面積が変わり、火災保険の保険金額にも影響するため、管理規約での確認が欠かせません。
上塗り基準と壁芯基準とは
マンションなどの区分所有建物では、各住戸の「専有部分」と全員で共有する「共用部分」の境界線をどこに引くかが重要です。この境界の決め方には「上塗り基準」と「壁芯基準」の2つがあり、管理規約で定められています。
上塗り基準とは、壁・天井・床の内側の仕上げ面(塗装やクロスの表面)を専有部分と共用部分の境界とする方法です。国土交通省のマンション標準管理規約ではこの基準が採用されており、現在の主流となっています。
壁芯基準とは、壁・天井・床の厚みの中心線を境界とする方法です。壁の厚みの半分が専有部分に含まれるため、上塗り基準よりも専有面積が広くなります。
2つの基準の面積差
壁芯基準で算出した面積は、上塗り基準よりも一般的に5〜10%程度広くなります。たとえば上塗り基準で専有面積が70平方メートルのマンションであれば、壁芯基準では約73.5〜77平方メートルになる計算です。
| 基準 | 境界の位置 | 専有面積 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 上塗り基準 | 壁の内側仕上げ面 | 狭くなる | 標準管理規約で採用。現在の主流 |
| 壁芯基準 | 壁の中心線 | 広くなる | 壁の半分が専有部分に含まれる |
この面積差は単なる数字の違いにとどまらず、火災保険の保険金額や建物評価額に直接影響します。
不動産広告と登記での面積表示の違い
不動産広告と登記簿では、それぞれ異なる面積表示の基準が使われています。
不動産広告やマンションのパンフレットに記載される専有面積は、建築基準法に基づく壁芯面積です。一方、不動産登記法ではマンションなど区分所有建物の床面積は内法面積(壁の内側で測定した面積)で登記することが定められています。内法面積は上塗り基準に近い数値になります。
そのため、購入時に広告で見た面積と登記簿面積が異なるのは正常なことです。火災保険の契約時に面積を入力する際は、管理規約の基準に合った面積を使用しなければなりません。
火災保険の保険金額への影響
火災保険では、専有面積をもとに建物の再調達価額(同等の建物を新たに建築・購入するために必要な金額)を算出し、保険金額を設定します。上塗り基準と壁芯基準のどちらを採用するかで面積が変わるため、保険金額にも差が生じます。
上塗り基準のマンションに壁芯基準の面積で保険を契約すると、実際の専有部分より広い面積で保険金額を設定してしまう「超過保険」になります。超過保険では、実際の損害額を超える部分の保険金は支払われないため、余分な保険料を負担していることになります。
逆に壁芯基準のマンションに上塗り基準の面積で契約すると、専有部分の一部が補償されない「一部保険」となり、万一の際に十分な保険金を受け取れない可能性があります。
基準の違いにより保険金額が数百万円変わることもあるため、契約時には管理規約の基準に合った正しい面積で保険金額を設定することが大切です。
管理規約の確認方法
自分のマンションがどちらの基準を採用しているかは、管理規約の「専有部分の範囲」に関する条文で確認できます。
管理規約に「天井、床および壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする」と記載されていれば上塗り基準です。躯体(コンクリート部分)は共用部分となり、内側の仕上げ材のみが専有部分に含まれます。
「壁の中心線で囲まれた部分を専有部分とする」という趣旨の記載があれば壁芯基準です。
管理規約が手元にない場合は、管理組合や管理会社に問い合わせましょう。火災保険の契約時や見直し時には、あらかじめ管理規約を確認しておくことで、適切な保険金額を設定できます。
参考文献
- 国土交通省 - マンション標準管理規約 - 専有部分の範囲に関する標準規約(上塗り基準を採用)
- 日本損害保険協会 - 損害保険Q&A すまいの保険 問53 - マンションの火災保険における専有部分と共用部分の契約方法
- e-Gov法令検索 - 建物の区分所有等に関する法律 - 区分所有法による専有部分・共用部分の法的定義
- 損害保険料率算出機構 - 火災保険参考純率 - 建物構造・面積に基づく火災保険料率の算出
