過労死認定とは
一言でいうと
長時間労働や過重な業務が原因で脳・心臓疾患や精神障害を発症・死亡した場合に、労働基準監督署が業務に起因すると認める判断。脳・心臓疾患では発症前1か月におおむね100時間、または2〜6か月で月平均おおむね80時間を超える時間外労働が判断材料となり、精神障害は業務による強い心理的負荷の総合評価で判断されます。
過労死認定とは
過労死認定とは、長時間労働や過重な業務が原因で脳・心臓疾患や精神障害を発症し、死亡または発病した場合に、労働基準監督署が「その傷病は業務に起因する」と認める判断のことです。労災として認められると、被災した労働者やその遺族は労災保険から給付を受けられます。
厚生労働省は「過労死等」を、業務における過重な負荷による脳・心臓疾患を原因とする死亡や、業務による強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺、およびこれらの疾患そのものと定義しています。認定にあたっては、業務とのつながりを判断するための基準が脳・心臓疾患と精神障害のそれぞれに定められており、労働基準監督署がこの基準に沿って個別に審査します。
過労死ライン(労働時間の目安)
脳・心臓疾患の労災認定基準では、長期間の過重業務を評価する際の労働時間の目安として、いわゆる「過労死ライン」が示されています。
| 評価の期間 | 時間外労働の目安 |
|---|---|
| 発症前1か月 | おおむね100時間を超える |
| 発症前2〜6か月 | 月平均でおおむね80時間を超える |
この水準を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連が強いと評価されます。いずれも「おおむね」という表現が用いられており、時間数のみで機械的に判断されるわけではない点に注意が必要です。
2021年(令和3年)9月の基準改正では、上記の水準には至らない場合でも、これに近い時間外労働があり、かつ勤務間インターバルが短い勤務や不規則な勤務といった労働時間以外の負荷要因が認められるときは、総合的に評価して業務と発症の関連が強いと判断できることが明確化されました。
精神障害については、対象となる精神障害を発病していること、発病前のおおむね6か月間に業務による強い心理的負荷が認められること、業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したとは認められないこと、という3つの要件で判断されます。
認定された場合の会社への影響
従業員の過労死が労災認定されると、会社(使用者)には次のような負担やリスクが生じます。
- 労災保険のメリット制により、保険給付の実績に応じて将来の労災保険料率が引き上げられる可能性がある
- 遺族や被災者から、安全配慮義務違反を理由とする高額な損害賠償請求(民事訴訟)を受けるおそれがある
- 長時間労働や法令違反が背景にあると判断された場合、企業名の公表や書類送検につながり、社会的信用が大きく低下する
労災保険からの給付はあくまで定型的な補償であり、慰謝料や逸失利益の全額をカバーするものではありません。そのため、労災認定とは別に、会社が安全配慮義務を怠ったとして民事上の賠償責任を問われるケースが少なくありません。
過労死認定への備え
長時間労働の是正や勤怠管理の徹底といった予防策が大前提ですが、万一の高額賠償に備える手段として、企業向けの賠償責任保険があります。
- 使用者賠償責任保険: 従業員の労災について、会社が安全配慮義務違反などで負う法律上の賠償責任を補償する
- 法定外労災補償保険(労災上乗せ保険): 政府労災の給付に上乗せして、会社独自の補償を行う
これらは過労死そのものを防ぐものではありませんが、賠償リスクが顕在化した際の経営への影響を和らげる役割を果たします。労働環境の改善とあわせて検討することが重要です。
関連用語
- 労災保険
- 使用者賠償責任保険
- 法定外労災補償保険
- 損害賠償責任
参考文献
- 厚生労働省 - 脳・心臓疾患の労災補償について - 過労死ラインの労働時間の目安と2021年改正のポイント
- 厚生労働省 - 脳・心臓疾患の労災補償について - 脳・心臓疾患の労災認定の枠組みと認定要件
- 厚生労働省 - 心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました - 精神障害の労災認定の3要件と認定基準
- 厚生労働省 - 過労死等防止対策白書 - 過労死等の定義と労災補償の状況
