保険料・費用(じか)

時価とは

一言でいうと

再調達価額(新価)から経年劣化や使用による消耗分を差し引いた、現時点での評価額のこと。火災保険で時価基準の契約をすると、全損時に同等の建物を再建できるだけの保険金を受け取れない可能性があるため、再調達価額での契約が推奨されています。

時価とは

時価とは、保険の対象となる建物や家財について、現時点での経済的な価値を金額で表したものです。同等の建物を新たに建築する、あるいは同等の家財を新たに購入するために必要な金額(再調達価額)から、経年劣化や使用による消耗分(減価額)を差し引いて算出します。

計算式で表すと次のとおりです。

時価 = 再調達価額(新価) - 経年減価額

たとえば、同じ構造・規模の建物を新築するのに2,500万円かかる場合、その建物の再調達価額は2,500万円です。ここから築20年分の経年減価額600万円を差し引くと、時価は1,900万円になります。

時価は建物の築年数が長くなるほど下がります。同じ建物であっても、築10年と築30年では評価額に大きな開きが出るため、火災保険の契約時にどちらの基準を選ぶかは補償内容に直結する重要な判断です。

再調達価額との違い

火災保険の保険価額を評価する方法には、「時価」と「再調達価額(新価)」の2種類があります。両者の違いを表にまとめます。

項目時価再調達価額(新価)
定義再調達価額から経年減価額を差し引いた額同等の建物を新築・再取得するために必要な費用
経年劣化の反映築年数に応じて差し引かれる差し引かれない
築20年の建物の評価例1,900万円2,500万円
全損時の補償建て直し費用が不足する可能性がある建て直し費用を十分に確保できる
保険料の水準比較的安い時価基準よりやや高い
採用状況古い契約に多い現在販売されている商品の標準

再調達価額は、中古住宅であっても築年数で減額せず、同じ建物を今建てたらいくらかかるかで評価します。そのため、全損になった場合でも建て直しに必要な費用を保険金でまかなえる設計になっています。

一方、時価では経年減価額が差し引かれるため、築年数が長い建物ほど再調達価額との差額が広がります。この差額分は自己負担となるため、時価基準の契約では補償に不足が生じるリスクがあります。

全損時に建て直し費用が不足するリスク

時価基準の契約で最も注意すべきは、建物が全焼や全壊した場合に保険金だけでは同等の建物を再建できない可能性があることです。

たとえば再調達価額が2,500万円の建物を時価基準で契約しており、時価が1,900万円と評価されている場合、全損の保険金は最大でも1,900万円です。実際に同等の建物を建て直すには2,500万円が必要なため、差額の600万円は自己資金で補わなければなりません。

さらに、近年は建築資材や人件費の高騰により住宅の建築費が上昇しています。時価基準の契約では、物価上昇分も含めた不足額が大きくなる可能性があります。

古い契約は時価ベースの場合がある

現在販売されている火災保険の多くは再調達価額を基準としていますが、かつては時価基準が標準であった時代があります。2000年代以前に契約した火災保険や、住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)の特約火災保険などでは、時価基準が採用されているケースがあります。

長期契約を自動更新している場合、契約当初の時価基準がそのまま引き継がれていることがあり、契約者が気づかないまま補償に不足が生じている可能性があります。保険証券の「評価基準」や「保険価額」の欄を確認し、時価と記載されていないか点検しておくことが大切です。

自動車保険では時価基準が一般的

火災保険とは対照的に、自動車保険の車両保険では時価が評価の基準として広く使われています。自動車は年式や走行距離に応じて市場価格が下がっていくため、時価による評価が合理的とされているからです。

車両保険の保険金額は、契約時点における車両の市場販売価格相当額(時価額)をもとに設定されます。日本損害保険協会によると、自家用乗用車の車両保険では「車両価額協定保険特約」が付帯され、契約時に保険会社と合意した時価額が保険期間を通じて適用されます。そのため年数が経過した車両ほど保険金額は低くなり、全損時に受け取れる金額も車両の市場価値に連動します。

契約の見直しポイント

火災保険の契約が時価基準になっている場合は、再調達価額基準への変更を検討してください。特に以下に該当する方は、早めの見直しが推奨されます。

  • 契約から10年以上が経過しており、契約内容を確認していない
  • 長期契約を自動更新で継続している
  • 保険証券の評価基準欄に「時価」と記載されている
  • 保険金額が現在の建築費相場と比べて大幅に低い

見直しの際は、保険会社や代理店に現在の建物の再調達価額を再評価してもらい、保険金額を適正な水準に設定し直すことが重要です。再調達価額基準に変更すると保険料はやや上がりますが、万が一の全損時に建て直し費用を十分に確保できるため、長期的な安心につながります。

参考文献

  1. 日本損害保険協会 - 損害保険Q&A 火災保険 問55 - 時価と再調達価額の定義、保険金額の設定方法
  2. 日本損害保険協会 - 火災保険のしくみ - 火災保険における時価と再調達価額の比較
  3. 損保ジャパン - 火災保険の保険金額の設定方法 - 評価額と保険金額の関係、適正な設定方法
  4. 損保ジャパン - 再調達価額と新価の意味 - 再調達価額と新価の公式な定義
  5. 日本損害保険協会 - 損害保険Q&A くるまの保険 問23 - 車両保険における時価額の評価と保険金額の設定