一部保険とは
一言でいうと
一部保険とは、損害保険契約において保険金額が保険の対象の実際の価値(保険価額)を下回っている状態のことです。一部保険の場合、損害が発生しても比例填補により保険金が削減され、損害額の全額を受け取れない可能性があります。
一部保険とは
一部保険とは、損害保険契約において、保険金額(契約で設定した補償の上限額)が保険の対象の実際の価値である保険価額を下回っている状態をいいます。たとえば、再調達価額が3,000万円の建物に対して保険金額を2,000万円に設定している場合、1,000万円分が不足した一部保険の状態です。
一部保険の状態で損害が発生すると、保険金の支払方式によっては損害額の全額が補償されず、自己負担が生じるおそれがあります。保険料を抑えるために保険金額を低く設定した結果、意図せず一部保険になっているケースも少なくありません。
比例填補(按分払い)の仕組み
一部保険の場合に適用される保険金の支払方式が「比例填補(比例払い)」です。保険法第19条では、保険金額が保険価額に満たないときは、保険金額の保険価額に対する割合をてん補損害額に乗じて得た額を保険給付の額とすると定めています。
計算式は次のとおりです。
支払保険金 = 損害額 x(保険金額 / 保険価額)
具体例
保険価額3,000万円の建物に保険金額2,000万円で契約しており、火災で1,500万円の損害が発生した場合を考えます。
比例填補の計算では、支払保険金 = 1,500万円 x(2,000万円 / 3,000万円)= 1,000万円となります。実際の損害額は1,500万円ですが、受け取れる保険金は1,000万円にとどまり、差額の500万円は自己負担となります。
ただし、現在の火災保険では再調達価額ベースの「実損払い」方式が主流です。実損払い方式の場合、保険金額の範囲内であれば損害額がそのまま支払われるため、比例填補は適用されません。上記の例で実損払い方式であれば、損害額1,500万円がそのまま保険金として支払われます。ただし、損害額が保険金額の2,000万円を超えた場合は、超過分が自己負担となります。
全部保険・超過保険との違い
保険金額と保険価額の関係により、損害保険契約は3つに分類されます。
| 分類 | 保険金額と保険価額の関係 | 保険金の支払い | 問題点 |
|---|---|---|---|
| 全部保険 | 保険金額 = 保険価額 | 損害額がそのまま支払われる | なし(最も適正な状態) |
| 一部保険 | 保険金額 < 保険価額 | 比例払いにより減額されることがある | 十分な補償が得られない |
| 超過保険 | 保険金額 > 保険価額 | 保険価額が支払いの上限となる | 超過分の保険料が無駄になる |
全部保険は保険金額と保険価額が一致している最も合理的な状態で、損害額がそのまま保険金として支払われます。超過保険は保険金額が保険価額を上回っており、超過部分の保険料が補償に反映されない無駄な状態です。一部保険はその逆で、補償が不足するリスクを抱えた状態です。
一部保険を避けるための保険金額の設定方法
保険価額を正しく評価する
一部保険を防ぐには、まず保険の対象の正確な価値を把握することが重要です。建物の場合、同等の建物を現時点で再築するのに必要な費用(再調達価額)を基準に保険金額を設定します。購入金額や固定資産税評価額をそのまま使うと実態と乖離する可能性があるため注意が必要です。
建物と土地の価格を区別する
不動産の購入価格には土地代が含まれていますが、火災保険の対象は建物と家財であり、土地は対象外です。購入価格をそのまま保険金額に設定すると超過保険になる場合がありますが、逆に建物部分だけを過少に見積もると一部保険になります。建物と土地の価格を正確に分けて把握しましょう。
定期的に契約内容を見直す
建築費や物価は年々変動します。新築時に適正だった保険金額でも、建築費の上昇により現在の再調達価額が保険金額を上回り、知らないうちに一部保険になっていることがあります。契約更新のタイミングで保険金額を見直し、現在の保険価額に見合った額に調整することが大切です。
家財の評価も忘れない
建物の保険金額は適正に設定していても、家財の保険金額が実態より低いケースがあります。家電製品や家具、衣類など、改めて積み上げると想定以上の金額になることが多いため、家財の価値も漏れなく評価して保険金額を設定しましょう。
参考文献
- 日本損害保険協会 - 損害保険Q&A 火災保険 問56 - 一部保険・超過保険・全部保険の定義と保険金支払いの仕組み
- 日本損害保険協会 - 損害保険について(損害保険の基本) - 損害保険における利得禁止の原則と実損てん補の考え方
- e-Gov法令検索 - 保険法(平成20年法律第56号) - 保険法第19条(保険金額が保険価額に満たない場合の保険給付)
- 損害保険ジャパン株式会社 - 火災保険ご加入時のポイント - 保険金額の適正な設定と評価額の考え方
