保険料・費用(げんかしょうきゃく)

減価償却とは

一言でいうと

建物や設備などの資産が、時間の経過や使用によって価値が減少する分を金額として算定する手続きのこと。火災保険では、再調達価額(新価)から減価償却分を差し引いた金額が「時価」となり、保険金額の評価基準に影響します。現在は減価償却を反映しない再調達価額基準の契約が主流です。

減価償却とは

減価償却とは、建物や機械設備、車両など時間の経過によって価値が減少する資産について、その取得にかかった費用を使用可能な期間にわたって分割し、費用として計上する会計・税務上の手続きです。国税庁の定義によれば、事業用の建物や設備など「時の経過等によってその価値が減っていく資産」が減価償却の対象となります。なお、土地や骨董品のように年月が経っても価値が下がらない資産は対象外です。

火災保険の分野では、この減価償却の考え方が建物や家財の評価に直結します。保険の対象となる建物の価値を算定するとき、新築時点からの経過年数に応じた消耗分(減価額)を差し引く計算が行われるためです。

会計・税務における減価償却の基本

会計・税務の世界では、建物などの資産を取得した年に費用を一括計上するのではなく、法定耐用年数にわたって毎年少しずつ費用として計上します。計算方法には主に定額法と定率法があります。

項目定額法定率法
費用の配分毎年同額を計上初年度に多く、年々減少
建物への適用適用される(建物は定額法のみ)建物には適用できない
特徴計算がわかりやすい早期に多くの費用を計上できる

建物については定額法のみが認められており、法定耐用年数は構造によって異なります。たとえば木造住宅は22年、鉄骨鉄筋コンクリート造の住宅は47年が法定耐用年数として定められています。

火災保険における減価償却の役割

火災保険では、建物や家財の保険価額を評価する基準として「再調達価額(新価)」と「時価」の2つがあります。この2つの関係を理解するうえで減価償却の概念が欠かせません。

時価は次の計算式で求められます。

時価 = 再調達価額(新価) - 経年減価額

ここでいう「経年減価額」は、建物の築年数や使用に伴う消耗を金額に換算したもので、減価償却の考え方に基づいています。築年数が長くなるほど経年減価額は大きくなり、時価は下がります。

たとえば再調達価額が2,500万円の建物で、築20年の経年減価額が600万円と算定された場合、時価は1,900万円です。時価基準で契約していた場合、全損時に受け取れる保険金は最大1,900万円にとどまり、実際に建て直すために必要な2,500万円との差額600万円は自己負担となります。

再調達価額(新価)との違い

再調達価額(新価)とは、保険の対象と同等の建物を現時点で新たに建築するために必要な金額です。築年数による減額を行わないため、減価償却の影響を受けません。

項目時価(減価償却を反映)再調達価額(新価)
減価償却の扱い経年減価額を差し引く差し引かない
築年数の影響築年数が長いほど評価額が下がる築年数に関係なく再建費用で評価
全損時の補償建て直し費用が不足する可能性がある建て直し費用を十分に確保できる
現在の主流古い契約に多い現在販売されている火災保険の標準

日本損害保険協会の解説によると、現在販売されている火災保険のほとんどは再調達価額を基準としており、減価償却による減額が適用されない設計です。これにより、中古住宅であっても全損時に建て直し費用を保険金でまかなえるようになっています。

時価基準の契約に注意が必要なケース

2000年代以前に契約した火災保険や、旧住宅金融公庫の特約火災保険などでは、時価基準が採用されていることがあります。時価基準の契約では減価償却が評価額に直接影響するため、築年数が長い建物ほど補償が手薄になります。

長期契約を自動更新で継続している場合、契約当初の時価基準がそのまま引き継がれている可能性があります。保険証券の「評価基準」や「保険価額」の欄を確認し、時価基準になっていれば再調達価額基準への切り替えを検討してください。

近年は建築資材や人件費の高騰により建築費が上昇しています。時価基準の契約では、物価上昇と減価償却の二重の要因で保険金額と実際の再建費用との乖離がさらに広がるリスクがあります。

参考文献

  1. 国税庁 - No.2100 減価償却のあらまし - 減価償却の定義、対象資産、計算方法(定額法・定率法)、法定耐用年数の解説
  2. 日本損害保険協会 - 損害保険Q&A 火災保険 問55 - 火災保険における再調達価額(新価)と時価の定義、保険金額の設定方法
  3. 日本損害保険協会 - 火災保険のしくみ - 火災保険における建物評価の基準と補償の仕組み
  4. 損害保険ジャパン株式会社 - 火災保険の保険金額の設定方法 - 新価と時価の違い、適正な保険金額の設定方法